邦画大好き丸の感想文

黄金時代は去ったのか? いや、まだ邦画にも面白い作品は生まれるはずだ、多分

【感想】少女ピカレスク

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少女ピカレスク

2018年公開

監督  井口昇

 

◉あらすじ

トップアイドルになることを夢見る新人アイドル・ヒカリ。一人でも多くのファンに“自分”を届けるため、自撮り生配信で濃密なコミュニケーションをとる毎日を過ごしていた。
そんなある日、新曲のPV撮影をすることに。ダンサーとして参加していた新人アイドル日菜子と亜依の2人と親しくなり、撮影も順調に進んでいた。しかし、“ちーちゃん”と呼ばれる少女が収録現場に現れ、撮影中止せざるを得ない混乱を引き起こしてしまう。
「いつも、ちーちゃんは大事な時に邪魔してくるんだ」
生配信中に心情を吐露するヒカリ。そして、日菜子や亜依の近くでも不可解な出来事が起こり始める。
嫉妬、憎悪、憧れ。生配信を通して映し出される、少女たちの想いとは……。

 

 

◉私的評価

 

★★★☆☆☆☆☆☆☆  3/10

 

◉私的評価

 

序盤の展開は本当に良かった。登場人物の一人一人にスポットライトを当てて、じわじわと物語の全貌が明かされていく感じ。配信画面に映る静かな恐怖の表現もツボをついてた。

 

映画としての完成度は、むしろ高かったと思うんです。低予算だけど、監督が表現したかったメッセージ性は感じられて、なおかつストーリーも単調じゃない。出演者の演技も、まあ流石に完璧とは言えないけど、そこそこ見れるものにはなっている。

 

でもさ、井口昇監督だぜ?  あの『ロボゲイシャ』とか『片腕マシンガール』の!  B級邦画が好きなら一度は目にしたことのある鬼才の!

 

だから、期待していたものと出されたものの乖離があったんですよ。おとなし過ぎる、とまでは言わないけど、全体的にメリハリがなかった。

 

この映画、起承転結の起と承まではいいんです。ぐいぐいと引き寄せられる感じで、ストーリーの先が気になる。ただ、そこからがイマイチなんですよね。物語の真相が明かされてから、変化がないんですよ。

 

同じ時間帯に起きたことを視点を変えて追っていく、というスタイルだから、「あー、そこはそうなってたのか」ってなるシーンはあることにはあるんです。だけど少ない。もっと観客の予想を裏切るような驚きを用意して欲しかった。

 

あと、映画的には見せ場になる残虐的な表現も、ちょっとダラダラしていた。犯人はやりたい放題好き勝手して、被害者は全く抵抗もしないんです。ミキサーに手を入れられそうになるシーンがあるんだけど、確かに迫力もあって良い絵面なんです。だけど、『ちょっと力入れたらミキサー倒せるだろ!』『いや、自分から指を閉じてミキサーに入れていくのか……』とか、とにかくツッコミどころが多くて。

 

一番アレだったのは、ラスト。これだけは擁護できない。ネタバレになるので詳しくは書かないけど、完全に蛇足だった。今までの展開はなんだったのか、と問いたくなる。友情出演を入れるためだけにねじ込んだシーンなんじゃないかと邪推したくなるほど酷かった。

 

とまあ、散々言ったんだけど、本作はいわゆるクソ映画というわけではなく、随所に見所がある分、途中でぶん投げて帰りたくなるようなことはなかった。エンディングが『ちーちゃんが編集したPV』という演出も最後の最後に感心させてくれたし。

 

だけど、ただただ物足りない。この映画はその一言に尽きると思います、以上。