【感想】高崎グラフィティ。
2018年公開
監督 川島直人
◉あらすじ(映画.COMより)
群馬県高崎市を舞台に高校の卒業式を終えた5人の若者たちの姿を描いた青春群像劇。幼なじみの美紀、寛子、優斗、直樹、康太の5人は高校の卒業式を終え、それぞれが将来への不安を抱えながら新生活を待っていた。そんな中、美紀の父親が娘の入学金を持ったまま姿を消す。同棲を始める彼氏に浮気疑惑が浮上する寛子、先輩に保険金詐欺を強要させられる優斗と、それぞれがトラブルに見舞われながら、5人は自分について初めて考える。映像制作会社のオフィスクレッシェントが主催する映像コンテスト「未完成映画予告編大賞」の第1回でグランプリを獲得した企画の映画化で、監督の川島直人はこれが長編映画デビュー作となる。
◉私的評価
★★★★★★★★★★ 10/10
◉総評
高校生の青春ものって、実はあんまり得意じゃなくて。なんか見ててむず痒くなるというか、恥ずかしくなるというか。
そんな僕が重い腰を上げて本作を観たわけですが。
いやぁ、最高だったよ。
ストーリー自体は割とよくある青春群像劇なんだけど、ずば抜けていたのがキャラクターの表現力。男3女2の5人組という極めてベタなグループがメインとなってストーリーが進むんだけど、それぞれのキャラに存在感があって、それが殺しあうことなく上手く噛み合っていた。
しかも、強烈な個性でキャラを立たせているわけではなく、各々の性格や抱える悩みで差別化しているので、非常に身近な人物像になっていた。バックボーンも劇中ではチラチラ見せる程度で決して説明はせず、観客に想像の余地を残しているのも非常に好印象。
最近の映画はなんでも説明したがるから、やっぱりそのシーンは退屈になるんです。でもこの映画にはそれがないからずっと主人公達の青春ストーリーにのめり込めるわけで。
例えば、入学金を持ったまま姿を消した父は、フィリピンパブや雀荘の常連で、本当にどうしようもない奴なんだけど、事あるごとに娘の話をしていた描写があるんです。でも、肝心の娘はそれを聞いてもノーリアクション。そこから親子の愛、なんて路線にも全くそれない。
もしここで、安直に幼い頃の回想とかにでも入ってれば、それはそれで効果的だろうけど、メインテーマである『青春』は薄れてしまう。材料を撒いているから、普通であればそのエピソードに寄り道したいと思うんです。だけどブレない。そこが上手かった。
そうして純粋培養された青春ストーリーは、30間際のおっさんでもニヤついてしまうような面白さと、キャラが生きているからこそ湧き出る彼らの群像劇への憧れがあって。冷静に見ればクサすぎたり現実離れしていたりするシーンもあるんです。でも見ている最中はそんな事考えられないくらいにのめり込んでいた。
ストーリーとして、大人への抵抗だったりだとか、協力して何か大きなことをやり遂げるだとか、そんな大袈裟な山場はないんです。それでも各シーン飽きがこない。本当にどのキャラも生き生きとしていて、だからこそ何気ないシーン一つ一つに味がある。
青春映画としてこれ以上ない完璧な作品だと思います。
スローモーションやフラッシュバックの使い方とか、確かに技術的に荒い部分はありました。それでも、そんな些事を吹き飛ばすくらいのエネルギーに溢れた、素晴らしい映画でした。
これ、今は上映館少ないけど話題になってもおかしくないレベルの作品なので、本当にこれからが楽しみです。