【感想】バースデー・ワンダーランド
バースデー・ワンダーランド
2019年公開
監督 原 恵一
◉あらすじ(公式サイトより)
誕生日の前日、アカネの目の前で地下室の扉が突然開いた。そこに現れたのは、謎の錬金術師のヒポクラテスとその弟子の小人のピポ。「私たちの世界を救ってほしいのです!」と必死でアカネに請う2人。自分に自信がないアカネは「できっこない」と断るが、好奇心旺盛で自由奔放な叔母のチィに促され……無理やり連れて行かれたのは、骨董屋の地下の扉の先から繋がる〈幸せ色のワンダーランド〉!
◉私的評価
★★★★★★★★☆☆ 8/10
◉総評
まず予告動画を見てほしいんだけど、世界観がホントに綺麗すぎる。色彩溢れた世界の奥行きと明暗に心の底からワクワクが止まらなくて、オープンワールドゲームで旅したいくらい。
ファンタジーな世界を自動車で旅するというアンマッチさも斬新で、それでいてうまいこと調和がとれている非常に心地よい雰囲気でした。
音楽もかなり良いです。クライマックスシーンでの盛り上がり方は、映画を見ていて久しぶりにぞわぞわ鳥肌が立った。もちろん、良い意味で。
物語を彩るキャラクターたちも非常にバランスの良い配置でした。御伽の国の案内人プラス主人公の少女っていうテンプレな構成に、大人である叔母さんが混じることで、ストーリーがぐんと幅を持ったというか。中々ないタイプの旅のパーティが新鮮で、そしてキャラ同士の掛け合いも生き生きしていてとても楽しい。
それが如実に現れるのが、旅の途中での日常パート。いい歳したおっさんの頰が自然に緩むくらいにユーモラスであったかくて、ずっとそのシーンを見ていたくなるくらいでした。子ども(主人公)と叔母さん(保護者)が異世界を旅するって、よく考えたら「クレヨンしんちゃん」の映画と同じ構成なんですよね。そりゃあ上手く回せるはずだと納得しました。
あとは、声の方も初めは引っかかりましたが、素人声優でもっとヤベェ作品をいろいろ見てきた経験値もあってか、後半はほとんど気にならない。さすがに「ペンギンハイウェイ」ほど上手いなぁ、とはならなかったですが、あれが異常なだけで普通に見られるレベルです。
そうなんです。ガワだけ見れば100点満点の映画なのです。でも私的評価が少し下がってるのは、1つ個人的に欠点だと感じる部分がありまして。
メインストーリーが地味すぎる。これに尽きます。なんか流されるままに旅をしてたら、勝手に問題が解決していた、みたいな。一応主人公が頑張ってる描写もあるんですけど、心変わりが急すぎるんですよね。お前、ついさっきまで帰りたいしか言ってなかったやんか! と突っ込みたくもなる。もう少し成長の過程を丁寧に描いてほしかったなぁ。
前半の緩やかな流れから一変してスピードアップするのも、ちょっと詰め込み感がありました。尺不足というよりかは、ペース配分でミスってる感じ。
ホントにそこだけなんですよね、不満点。イリヤさんのキャラデザは魅力的だし、説明しすぎず、背景や小道具で設定を語る工夫なんかはメチャクチャ好みでしたし、「クレヨンしんちゃん」ファンには嬉しい遊びも随所にあって興奮したし。
もう少しで傑作に届きそうな佳作、といった印象です。ワンクールのアニメになるとかなり化けるかも。ならないかな、ならないよね。
というわけで、日常パート目当てでおそらくもう一回見に行きます。グダグダ言いましたが、ぶっちゃけかなり好きなタイプの映画なんで、ええ。