邦画大好き丸の感想文

黄金時代は去ったのか? いや、まだ邦画にも面白い作品は生まれるはずだ、多分

【感想】ドロステのはてで僕ら

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ドロステのはてで僕ら

2020年公開

監督 上田誠

 

https://m.youtube.com/watch?v=lVdd21wWt_8#

 

◉あらすじ(公式HPより)

とある雑居ビルの2階。カトウがギターを弾こうとしていると、テレビの中から声がする。
見ると、画面には自分の顔。しかもこちらに向かって話しかけている。
「オレは、未来のオレ。2分後のオレ」。
どうやらカトウのいる2階の部屋と1階のカフェが、2分の時差で繋がっているらしい。
“タイムテレビ”の存在を知り、テレビとテレビを向かい合わせて、もっと先の未来を知ろうと躍起になるカフェの常連たち。さらに隣人の理容師メグミや5階に事務所を構えるヤミ金業者、カフェに訪れた謎の2人組も巻き込み、「時間的ハウリング」は加速度的に事態をややこしくしていく……。
襲いかかる未来、抗えない整合性。ドロステのはてで僕らは ――。

 

◉私的評価

 

★★★★★☆☆☆☆☆   5/10

 

◉総評

 

ヨーロッパ企画タイムリープものとくれば、100人が100人、かの名作『サマータイムマシン・ブルース』を思い出すだろう。かく言う僕もその一人で、期待に胸を膨らませつつ、映画を鑑賞させていただいた。

 

率直に言えば、やや期待外れ。なんて言うんだろう、映画としては面白いんだけど、物語としてみれば致命的につまらない。

 

脚本の技術に関しては、本当に素晴らしい技量を感じられた。2分後の未来、という短い間隔をテーマに、あれだけ破綻なく綺麗に纏め上げているのだから、相当に緻密に練られたものなんだろうというのは想像に難くない。そして、未来と過去を長回しで一つに繋げるというアイディアと、それを実現させるテンポの良さ。文句なしに、舌を巻く技術だと思います。

 

でもねー、やっぱ物語の仕組みにばっか専念してるせいか、ストーリーに広がりがない。演劇でやる分にはいいけど、映画というスケールに合ってない、とでも言うか。キャラクターも、脚本を成立させる為の舞台装置になりさがってる。だから味がないし感情も揺さぶられなかった。

 

あとは伏線の部分に不満が残る。タイムトラベル・タイムリープものって伏線とその回収が命だと思うんです。あの時未来でこうなっていたのは、過去のある事柄が原因で・・・みたいな。映画序盤からモヤモヤと引っかかっていた伏線の意味を理解した時に、我々視聴者は他では得難いカタルシスを味わえるわけです。

 

本作でも一応伏線回収はあります。ただ、2分という区切りからか、伏線を張ってからの回収がすぐにされるので、見ている私たちは快楽ゲージが溜まっていない。だから全然気持ちよくない。

 

も一つ文句をつけるなら、ストーリー全体の流れがテンプレすぎるんです。タイムマシーン発見→それを使って利益を得ようとする→でも失敗しちゃったから、主人公が頑張ってなんとかする、という王道展開。三幕構成が有能すぎるのが悪いんですけどね。まあ、発想も設定もユニークなんだから、もう少し展開に捻りが欲しかったです。

 

まとめますと、2分後の未来という独自の設定が逆に縛りとなって、いわゆる自縄自縛に陥ってしまった。そんな作品です。

 

あ、散々貶してるけど普通に見れる映画ですからね。期待値が高すぎたってだけで、悪くはないですよ。マジマジ。でもこの感想を見た人が見たくなるかと言われると微妙ですね。うーん、そうだなー‥‥。映画を普段あんま見ない人からすれば、多分死ぬほど面白くないので、これを見て面白いと言えれば映画通ぶれると思います。そんな用途で使ってみてはいかがでしょうか、とプレゼンを絞り出してみました。以上。