【感想】神は見返りを求める
神は見返りを求める
2022年公開
監督 吉田恵輔
◉あらすじ(公式HPより)
主人公・イベント会社に勤める田母神(ムロツヨシ)は、合コンでYouTuber・ゆりちゃん(岸井ゆきの)に出会う。田母神は、再生回数に悩む彼女を不憫に思い、まるで「神」の様に見返りを求めず、ゆりちゃんのYouTubeチャンネルを手伝うようになる。登録者数がなかなか上がらないながらも、前向きに頑張り、お互い良きパートナーになっていく。そんなある日、ゆりちゃんは、田母神の同僚・梅川(若葉竜也)の紹介で、人気YouTuberチョレイ・カビゴン(吉村界人・淡梨)と知り合い、彼らとの“体当たり系”コラボ動画により、突然バズってしまう。イケメンデザイナ一・村上アレン(栁俊太郎)とも知り合い、瞬く間に人気YouTuberの仲間入りをしたゆりちゃん。一方、田母神は一生懸命手伝ってくれるが、動画の作りがダサい。良い人だけど、センスがない…。
恋が始まる予感が一転、物語は“豹変”する――!
◉私的評価
★★★★★★★☆☆☆ 7/10
◉総評
今もっともアツい(僕の中で)映画監督、吉田恵輔監督作品である。
まあ、今というかなんというかずっと好きな監督なんだけど。
そんなわけで元からはまることは確定していたんだけど、結果としてはそこそこ。
めちゃんこ面白かったんだけど、後半の展開がちょっと好きじゃなかったです。少しネタバレになるけど、安直なバッドエンドって感じで。いや、バッドエンド自体は嫌いじゃないんだけど、なんていうか、物語を終わらせるための無理やりな展開だと感じられる流れでした。
良かった点はホントにたくさんあるんだけど、特筆するならば、やっぱり男心を描くのが上手いなぁと感じました。ストーリーの肝を簡単に言うと、『精神的NTR(ネトラレ)』です。BSS(僕のほうが先に好きだったのに、というジャンル。よくエロ同人で使われる)でもある。僕みたいな草食系男子には、シチュエーションがぶっ刺さります。
そしてそれは、ムロツヨシさんの好演があって更に感情移入させられる。男に対する「あなたは優しいね」は悪口だってよく言いますけど、そのものドンピシャな演技なんです。うじうじしていて押しに弱く、それでいてプライドが高い。見ているだけで心が痛くなる。これ以上ないくらいにはまり役だと感じました。
まあ、ムロさんの演技がいいのはある意味当然として、僕個人としてはそれ以上に岸井ゆきのさんを評価したい。序盤はまーじで底辺ユーチューバーにしか見えないのもすごいし、後半にかけてユーチューバーとして自信がついていく感じも自然だし、そんな中で時折見せる素朴っぽさというか素人っぽさみたいな演技も最高でした。もちろん広告通りムカつく女なんだけど、そうなるのも理解できるリアルさがある。『愛がなんだ』の頃より数段パワーアップしています。
キャスティングは文句なしとして、映画的な表現も非常に良い。前半後半でメリハリがついているのはいつもの吉田監督として、今作は取り扱う題材がYouTubeだからか、シュールな場面がいくつもありました。見た人全員が上げるんだろうけど、田母神とゆりちゃんがお互いに自撮り棒を突き付けながら罵倒し合うところは、まさに本作を象徴するシュールさとアツさが混在している素晴らしいシーンです。
まとめると、最初にも言いましたが、本当にオチ以外は完璧と言ってもいい映画でした。展開も中弛みなく、ずんずん嫌な気持ちにさせられます。この夏、胸糞な気持ちになりたい方はぜひ、劇場に足を運んでみてください。