邦画大好き丸の感想文

黄金時代は去ったのか? いや、まだ邦画にも面白い作品は生まれるはずだ、多分

【感想】サバカン SABAKAN

ポスター画像

サバカン SABAKAN

2022年公開

監督  金沢知樹


www.youtube.com

 

◉あらすじ(公式HPより)

 

1986年の長崎。夫婦喧嘩は多いが愛情深い両親と弟と暮らす久田は、斉藤由貴キン肉マン消しゴムが大好きな小学5年生。そんな久田は、家が貧しくクラスメートから避けられている竹本と、ひょんなことから“イルカを見るため”にブーメラン島を目指すことに。海で溺れかけ、ヤンキーに絡まれ、散々な目に遭う。この冒険をきっかけに二人の友情が深まる中、別れを予感させる悲しい事件が起こってしまう・・・。

 

 

◉私的評価

★★★★★★★★☆☆   8/10

 

◉総評

 

160キロど真ん中ストレートな王道作品である。それがズドンと来た。

 

小学生たちの出会い・友情・別れを描いた、何のひねりもない、あらゆる意味で使い古されたストーリーであるのに、どうしてこんなにも心に沁みるのだろう。ノスタルジックな雰囲気? 初々しい子役の演技? はっきりとは分からないが、映画全体から醸し出される雰囲気が『あの頃』を強烈に思い出させるからだと僕は思う。

 

だって、子供が悪いことしたから思いっきり頭を叩く肝っ玉母ちゃんなんて、もう地上波からは絶滅してしまっている。作り物めいた昭和の風景なんだけど、それが平成初期に見た映画を彷彿とさせ、非常に懐かしく感じられた。

 

そのうえで、映画としての構成もいい。こういう素朴な映画っていうのは、少しの油断で退屈な作品になりがちだけど、今作は起承転結のメリハリがついているおかげで最後まで飽きることなく鑑賞できた。昨今の映画に標準装備されているといっても過言ではない伏線やどんでん返し抜きでこれを成し遂げているのだから、構成の技術力がよほど優れているんだろうなと思う。詳しいことはわかんないけど。とにかく、中弛みなく見れたということはそういうことなんだろう。クライマックスではドカンと感情を揺さぶられるし、うまいこと掌の上で転がされたなという感じ。

 

子どもが主役の映画といえば、子役の演技が気になるところだが、はっきり言って可もなく不可もなくだったと思う。でも、昔の子供が主人公の映画ってこんなもんだったよね、と許せるレベル。逆にばっちり演技ができる子どもって不気味さを感じてしまうから、ほどほどの塩梅でよいなと思った。脇を固める大人たちに関しては文句なしだったんじゃないでしょうか。特に主人公の両親である尾野真千子さんと竹原ピストルさんは誰が見ても100点をつけるくらいに昭和夫婦を演じていた。掛け合いもいちいち面白く、この映画の隠れた見どころにもなっている。

 

あとは、多分いないと思うけど草彅剛を見たくて鑑賞した人はがっかりするくらいには出番がなかった。そのうえ大人時代のエピソードは、ラストシーン以外は蛇足だし。まあ、そこで釣っとかないと多分普通の人は見に行かないキャスティングだと思うので、大人の事情で致し方なしかなと。

 

最後になりますが、大人も子供も楽しめる実写映画という絶滅危惧種において満足のいく良作となりますので、この夏(秋)お子さんと一緒にご鑑賞してみてはいかがでしょうか。