邦画大好き丸の感想文

黄金時代は去ったのか? いや、まだ邦画にも面白い作品は生まれるはずだ、多分

【感想】茶飲友達

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茶飲友達

2023年公開

監督  外山文治

 


www.youtube.com

 

◉あらすじ(公式HPより)

 


妻に先立たれ孤独に暮らす男、時岡茂雄(渡辺哲)がある日ふと目にしたのは、新聞の三行広告に小さく書かれた「茶飲友達、募集」の文字。
その正体は、高齢者専門の売春クラブ「茶飲友達(ティー・フレンド)」だった。運営するのは、代表の佐々木マナ(岡本玲)とごく普通の若者たち。
彼らは65歳以上の「ティー・ガールズ」と名付けられたコールガールたちに仕事を斡旋し、ホテルへの送迎と集金を繰り返すビジネスを行なっていた。
マナはともに働くティー・ガールズや若者たちを “ファミリー”と呼び、それぞれ孤独や寂しさを抱えて生きる彼らにとって大事な存在となっていた。
ある日、一本の電話が鳴る。
それは高齢者施設に住む老人から「茶飲友達が欲しい」という救いを求める連絡であったー。

 

◉私的評価

★★★★★★★☆☆☆   7/10

 

◉総評

 

鑑賞する映画を選ぶ際に、僕は「怖いもの見たさ」という要素は非常に大きいものだと考えています。血みどろホラーだったり胸糞悪いサスペンスだったり、本来見たくないはずのものなのに、何故かそんな映画を求めてしまう。その理由は、例えば非日常感を味わうためだとか、人によって様々だけど、僕は「怖いもの見たさ」=好奇心による動機付けが大きな割合を占めていると思う。大げさな話をすると、人間がここまで発展できたのも好奇心のおかげだし、こいつが秘めてるパワーはとんでもないものなのだ。

 

そしてこの映画は「怖いもの見たさ」という欲求をこの上なく刺激してきた。「老人の性生活」という現代日本においては最上のタブーを描いているのだ。じいちゃんばあちゃんのベッドシーン、めちゃくちゃ怖いじゃん。でも見たいよね。

 

そういうわけで鑑賞したのだが、うまくまとまった良い映画だった。肝心の「老人の性生活」、つまり風俗のプレーシーンなんかは凄い力の入れようで、なんかこう、ねっとりしていました。しわっしわのおばあちゃんなのに、妙にエロスを感じられて、危ない世界へと連れていかれるところでした。接客方法やら嬢の送り迎えやら、本番禁止と言われながら皆やってるじゃんとヤっちゃうところやら、そういった細部のリアリティがあるからこそ、凄まじい吸引力があるのだろう。思い返せば、『PLAN75』くんにはそういう老人のリアリティが不足していた。

 

お店側だけでなく、お客側のおじいちゃんたちも生々しいリアルな性欲を感じられて、とても気持ち悪かった(誉め言葉)。風俗説教おじいさんとか、最高。

 

話の大筋としては老人たちがテーマなんだけど、それと対比させるサブストーリーで若者たちの話も挟まれていて、こっちも中々面白い。シンプルでありきたりな展開なんだけど、ちょうどいい頃合いで視点が切り替わる群像劇となっていて、飽きが来ない構成だった。同じように老人テーマの群像劇である『PLAN75』くんとは大違いだ。

 

生活保護なんて恥ずかしいから受けないと言いつつ、風俗の給料を全部パチンコに突っ込むおばあちゃん。子供を産むために、ためらいなく生活保護を受けようとする若い娘。この辺りとか、世代ごとの良いところ悪いところが綺麗に対称となっていて、素晴らしい構成だったと思う。

 

惜しい点としては、やはり実話ベースの弊害なのか、ラストが無理やり軌道に乗せました感があったところ。めちゃくちゃ終盤までみんなハッピーにこにこ状態だったので、あれ、これ最後摘発→逮捕されるんだよな、そこまではやらないのか? なんて思ってましたが、最後の10分くらいであれよあれよと大崩壊。それまでの感動の余韻を置き去りにするかのようなスピードで、終劇となる。

 

個人的な推測に過ぎないが、おそらく監督の葛藤が生んだラストなんだと思う。ティーフレンドの仲間たちが困難を乗り越え、助け合いながらハッピーエンド、という形にしたいのだが、犯罪は犯罪で、実話を基にしている以上、事実は代えられない。だから、撮りたいものを尺ギリギリまで詰め込んだ結果、ああいうラストになってしまったんだろうなと感じた。

 

ラストの主人公の扱いについてはよかったんだけどなあ。バックボーンを深堀してからの最後の気づきとか。ただ、それも唐突感が拭えない。

 

とまあ、最後に不満が残る結果となったが概ね満足できる良い映画だったので、「怖いもの見たさ」でぜひ鑑賞してほしいと思います。そしてそのあと『PLAN75』を見て、どうしてこっちはこんなに面白くないのか比較検討するという鑑賞法が一押しです