【感想】宝島
宝島

映画情報
監督 大友啓史
脚本 高田亮 大友啓史 大浦光太
2005年/191分
あらすじ(公式HPより)
1952年、沖縄がアメリカだった時代。米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちがいた。いつか「でっかい戦果」を上げることを夢見る幼馴染のグスク(妻夫木聡)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)の3人。そして、彼らの英雄的存在であり、リーダーとしてみんなを引っ張っていたのが、一番年上のオン(永山瑛太)だった。全てを懸けて臨んだある襲撃の夜、オンは“予定外の戦果”を手に入れ、突然消息を絶つ…。
残された3人は、「オンが目指した本物の英雄」を心に秘め、やがてグスクは刑事に、ヤマコは教師に、そしてレイはヤクザになり、オンの影を追いながらそれぞれの道を歩み始める。しかし、アメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境では何も思い通りにならない現実に、やり場のない怒りを募らせ、ある事件をきっかけに抑えていた感情が爆発する。
やがて、オンが基地から持ち出した“何か”を追い、米軍も動き出す――。消えた英雄が手にした“予定外の戦果”とは何だったのか?そして、20年の歳月を経て明かされる衝撃の真実とは――。
私的評価
★★★★★★☆☆☆☆ 6/10
感想
◉3時間越えはやりすぎなんよ
だって映画2本分ですよ。あの長いことで有名な『アベンジャーズ エンドゲーム』よりもさらに長いなんて。さすがに劇場で見るにはハードすぎる。正直に言うと、最後の方はおしっこ我慢してました。
上映時間が長い=悪い映画、なんてことは言わないんだけど、本作に関しては本当にその尺でやる必要があったのか疑問に思う部分も結構多くて。本作はメインキャラクターが3名いてそれぞれのお話が交互に進んでいくような形をとってるんですけど、一つ一つの場面が長すぎて、映画としての連続性が失われてしまっているように感じました。だから感情移入がしにくい作りになっているんじゃないかと思います。
一番顕著なところでいうと、妻夫木聡がアメリカの諜報部員と手を組んで事件を捜査する、って話の流れになるんですけど、しばらくその話は出てこなくて、大体1時間後くらいに「いやあ、お前は優秀な捜査官だぜー」ってパーティで褒められるところが出てくるんです。それまでの過程とかが全部すっ飛んでるので、いつの間にそんな風になってんだと観客は置いてけぼり。そのくせ、諜報部員は重要キャラクターで、後半に妻夫木聡と「トモダチ」だなんだと感動的なシーンがあるんですけど、肝心の繋がりを描写していないんで、急に本人たち同士でそんなこと言われても、って冷めちゃいました。
そうかと思えば、意味ありげにヤクザの親分として登場したピエール滝は登場シーンだけでその後全く出てこなかったり。思い返してみれば、いやこのシーンやる意味あったか? というところが非常に多かった。そのくせ、上で挙げたようなメインの展開に直接つながるシーンの描写が不足していたりと、非常にバランスの悪さを感じました。
説明的な場面を入れるよりも、登場人物の心理描写や戦後沖縄の独特な雰囲気を見せることに重点を置いていることはよくわかるんですけど、観客を楽しませることよりも自分が表現したいことの方を監督が選んでるような感じがして、もやもやしちゃいました。映画は芸術作品だ、と捉えるならそれでいい気はしますけど、やっぱ楽しませてなんぼな媒体だと僕は思うので、その辺はもう少しユーザーフレンドリーな感じで作ってほしかったです。
◉演出に関しては邦画最高峰の出来
ここまで批判的な意見を言っておきながらなんですけど、盛り上がるシーンでのぶち上げ方に関しては手放しで褒められるほど素晴らしかったと思います。特に予告映像やポスターにもなってるコザ暴動の映像は食い入るように引き付けられました。無数の人が織りなすカオスな熱気、熱に浮かされる、なんて表現がありますが、まさに観客を飲み込むスケールがある名シーンだと思いました。
飛び交う民謡と怒号、舞い落ちる火の粉に転がるアメ車。みんながみんな、好き勝手暴れているはずなのに、導かれるようにして一方向へ足並みをそろえていく。その流れに抗えず、哄笑しながら夢遊病のようにさまよう妻夫木聡。現実味を伴う悪夢みたいな空気感が徐々に見る側にも火をつけていくみたいな。ホント、あのシーンの完成度だけで見れば傑作と言っても過言ではない。
そこから基地に侵入するまでの一連の流れもスピード感があってよかったんですけど、ラストに向かって少し失速してしまったのが残念でした。これも時間配分が悪いというか、せっかく最高潮に盛り上がった観客側の感動がだらだらと続く展開で冷やされてしまった印象です。物語的にも「謎」を解決する必要はあったと思うんですけど、そのための主人公たちの行動があまりにストーリーの都合で動かされすぎているというか。いや、あんだけ息もってんなら病院行けば助かるやろ、とツッコみたくなりました。
ホント、随所での雰囲気だけでいえば傑作の素質は持ってる映画だと思うんですよ。荒廃した沖縄の人々の住処に対し、明らかに浮いてるアメリカ人用の酒場とか、戦後の歪な沖縄をかなり特徴的にとらえていて面白い映像になってるし、所々に挟まれる豊かな自然の神秘的なカットも冗長すぎず良い感じ。そう考えると、やっぱ映画に撮って編集作業って滅茶苦茶大事なんだなと思わされました()
◉キャストは正直中途半端な豪華さ
最後にキャスティングについてですけど、正直方向性が良く分かんない感じだなって思います。豪華キャスト、と呼ぶにはあと一歩足りない感じですし、かといって無名の俳優を重宝しているかというとそうでもない。もちろん、妻夫木聡・広瀬すずを筆頭に一流のキャストを集めてはいるんですが、長すぎる上映時間に対して今一つ充足感がない。どっちつかずな印象は否めないです。
もちろん僕だって映画好きを自称してるんで、キャストが豪華だからすげー映画!なんて単調な理論を言うわけではないんですけど、こんだけの規模の映画なんだからもっとキャスト面でもできることはあったんじゃないかなって思っちゃいます。くそ長い映画なのにメインキャストが絞られてるから、絵面が変わんないってのもあるかもしれません。
キャスト面で言及するなら、まずは広瀬すずさん。初期シーンでざんばら髪の芋っぽい感じだったんですけど、あれであそこまで可愛いのは反則じゃないでしょうか。最近は可憐な少女から落ち着いた大人の女性を演じることが多くなってきてますが、ぶっちゃけまだまだ少女役でもいける魅力はあると思います。広瀬すずの可愛さ再確認という意味では、大変意義のある映画ではないかと。
あとは窪田正孝さん。前に見た「悪い夏」でもチンピラ役でしたけど、もうすっかりそんな感じで定着してしまった感があります。昔は正統派な主人公、って感じの役どころが多かったんですけど、でもまあ幸の薄そうなチンピラが似合うから仕方ない。
んでもって、瑛太こと永山瑛太さん。ストーリー的に出番は少なめなんですけど、存在感としては凄まじかった。あんだけ小汚いタンクトップだろうが歯がくっそ汚かろうが、カッコいいのはずるい。消えた英雄、という役どころに恥じないオーラ。子のキャスティングに関しては満点と言ってもいい。主役である妻夫木聡さんを食ってしまっているところが賛否分かれる感じでしょうか。
◉まとめ
・さすがにこの長さを劇場で見続けるのは苦痛
・場面場面での演出はとても良い
・映画の規模にキャスティングが釣り合ってない感じ
・沖縄弁に字幕は付けてほしかった
まとめると、20年間という沖縄統治時代の長さを良い意味でも悪い意味でも感じられる、な映画でした。それはそうと、今年沖縄映画多くないですか? 「風のマジム」も見たんでできればそっちもレビューしたいです。