【感想】フレイムユニオン 最強殺し屋伝説国岡 私闘編
フレイムユニオン 最強殺し屋伝説国岡 私闘編

映画情報
監督 阪元裕吾
脚本 阪元裕吾
主演 松本卓也 伊能昌幸 上のしおり 大坂健太
2025年/103分
あらすじ(公式HPより)
殺し屋真中卓也はアルバイトで生計を補う日々を送っていた。ある日、銃の調達依頼で大きなミスを犯し、命の危機に瀕していたところを、同じ殺し屋の国岡昌幸に救われる。しかし、その一件が原因で真中は殺し屋協会から謹慎処分を受けてしまう。そんな中、突然現れたのは京都殺し屋ランキング元祖1位である真中の父親。「まともに仕事もできねえなら、実家の手伝いせえアホ!」と一喝し、無理やり実家に連れ去ってしまうのだった―。
しばらくして国岡が様子を見に行くと、そこには淡々と家事をこなし、家の手伝いに徹する変わり果てた真中の姿があった。しかし国岡の「お前さ…本当は殺し屋やめたくないんじゃないの?」という言葉が、真中の眠っていた闘志に再び火をともす。自分の才能に限界を感じながらも父親に結党を申し込み、再び殺し屋として道を歩む決意を固める!父親を倒すため、熾烈な特訓の日々が始まった―!!
私的評価
★★★★★★★★☆☆ 8/10
感想
◉女の映画で稼いだ金で趣味の映画を撮る男
昨年発表された同監督作「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」は大ヒットと呼んでも間違いない話題作でした。これまでにはない豪華キャスト・公開規模で、僕の周りでも一気に知名度が上がったような気がします。それだけではなく、ベビわるシリーズはなんとドラマ化までされ、その勢いはとどまることを知りません。
また、2025年2月には石黒正数の名作漫画の実写版「ネムルバカ」のメガホンも取っていましたね。原作漫画が大好きな僕をしても満足のいく出来となっており、filmarksや映画.comなど、各種批評サイトでも高得点を維持しています。石黒漫画のファンなんて気難しいやつばかり(偏見)だからレビューなんて荒れそうなもんだけど、きっちり中央値も高そうな評価です。
そんなわけでいまやメジャー監督の仲間入りをしてしまった坂元監督ですが、何を隠そう、私は古参を名乗っていいくらいには昔から応援していました。その証拠に、
2018年の商業映画デビュー作から絶賛(?)してます。どや。
本作はそういったメジャーな活動で稼いだ金を使って作られた趣味全開の映画になっています。まさかこれだけ有名になったのに国岡の続きを作ってくれるなんて夢にも思ってませんでした。ちなみに、これまでのネームバリューでシネコン上映されてますけど、まず間違いなくミニシアターで流すレベルの規模感な映画ですので、ベビわるファンとかが何も知らずに見に行ったらおったまげると思いますよ。
これがベビわるみたいに、一気に予算がっつりで作られてたら逆に期待外れだったのも事実です。国岡シリーズはなんちゃってモキュメンタリーの安っぽい作りが特色みたいなものなので、これで正解だったと思います。てか、キャスト面とか考えたら前作「グリーンバレット」の方が金かかってそうだよね……。板尾創路とか出てたし……。
今作はこれまでのシリーズとは違い、国岡ではなくその友達の真中というキャラクターを中心とした話になっています。クオリティや雰囲気は同じですが、話の構造はかなり違う本作。果たして内容はいかほどか、次項にて語らせていただきます。
◉これはシリーズ最高傑作なのでは……?
結論から言わせていただければ、本作はシリーズどころか坂元監督作品群の中でも上位に入るくらいに好みの作品でした。めちゃんこおもろい。まず一番良いところなんですけど、ストーリーラインがきっちり王道に乗っかっていて安心して観れたというところ。どちらかというと変化球を好む監督だとは思うんですが、本作はダメ男の下剋上というベタ中のベタな話をきっちり魅力的に描けていたと感じました。
これまでのシリーズを見ていて、ぶっちゃけ真中というキャラクターを好きな人はほとんどいないと思います。そんな彼を主役において大丈夫なのかなという不安は上映中もしばらく続いていて、序盤はことあるごとに残念過ぎる真中の生態が明かされていくんです。語調は強いくせにヘタレだし、酒におぼれてやらかすしで、人間としての魅力は無に等しい。だから、いざ彼が一念発起してトレーニングを始めても、何というか乗り切れない気持ちがありました。
ただそこは、ちさととまひろという大人気キャラを生み出した監督の手腕。いよいよ決闘となる真中なんですけど、3週間修業した成果は全く出せず、あの手この手がすべて透かされてしまう。ただ、諦めずに歯向かい、卑怯でも勝てればいいとプライドをかなぐり捨てて格上の相手に立ち向かう姿に、いつの間にか感情移入してしまっていました。この辺のノせ方がホントに上手い。
そんで、その決闘シーン自体がすっげえいいんです。刀を使うシーンだからということであの「侍ストリッパー」の剣術指南の人をアクション監督にしてるんですけど、すっげえキレキレで。いつもの重厚なねちっこいアクションもいいんですが、今作のスピード感あるアクションも好きでした。銃を使った近接戦闘も多く、どことなくガンカタ味も感じられました。
一番好きなシーンはやっぱり国岡さん。真中が途中離脱して2対1になってしまうんですけど、かまわず両手で来いよ来いよ、みたいにするところ。くっそカッコいい。本作では明らかにバンプアップして迫力が増しており、半裸になるシーンがちらほらあるんですけどマジで強そう。
◉セリフ回しとギャグセンスは安定の良さ
坂元監督といえば会話シーンが好き、って人は一定以上いると思います。もちろん映画オタクの中でですけど。本作でもセンスあふれるセリフ回しは健在で、何気ない日常会話でもクスリとさせられるシーンが多いです。皆が殺し屋っぽいテンションでやり取りする中で、国岡さんだけが一般人的な目線で冷静に止めに入ったり、殺し屋としての仕事をたくさん撮っているはずの監督が決闘は法律で禁止されてるからダメと言いだしたり。温度差やギャップを上手く利用した会話が多く、システマチックに面白さを出してるんだなぁと感心しました。
一番好きなのは、決闘中に真中の親せきのお兄さんが「まだ決闘を止めるには早い、目が死んでない」みたいなことを言うんですけど、それを聞いて審判の大阪さんが「いや、あなた誰ですか」っていうシーン。そういや初対面でしたね、とシチュエーションで笑っちゃいました。これも映画を見ている視聴者と登場人物の視点とのギャップを利用した笑いで、面白い会話をきちんと客観視して作れている凄さを感じました。
ギャグもキレッキレで、色々あったんですけど、やっぱ一番はドロップキック専門の殺し屋ですよね。ドロップキック専門の殺し屋!? 自分で言ってても意味わかりませんが、それを出すセンスには脱帽してしまいます。ドロップキックで56人殺してるらしいですよ、彼。作中で一番体がムキムキなのもポイント高い。
最後に、やっぱりファンサービスというものを分かっているのも大きい加点要素だと思います。前作までに登場してたメインキャラを出すのはもちろんなのですが、「グリーンバレット」からも辻優衣さんが出てたりして、予習で見返していた私としては嬉しくなっちゃいました。
そんなわけで終始べた褒めな内容にはなっていますが、再度言いますけど映像のクオリティとかは所詮ミニシアターレベルではあるので、そのあたりは理解して見に行ってもらえると楽しめるかと思います。ぜひ前作までのシリーズとyoutubeの「殺し屋密着チャンネル」を鑑賞の上、劇場までどうぞ。
◉まとめ
・メジャーになっても初期作品を続けてくれる姿勢が好き
・アクションもストーリーもシリーズ最高傑作
・会話やコメディシーンは安定のクオリティ
・パンフはまだ買ってないんですけど、天内の元ネタは刃牙の天内悠……?
まとめると、メジャーに行っても低予算でファン向けに作ってくれるのって良いよね、な映画でした。これを見習って白石くんもコワすぎシリーズ作ってほしいです。僕はいつまでも新コワすぎシリーズの続編待ってますからね……!