【感想】フレイムユニオン 最強殺し屋伝説国岡 私闘編
フレイムユニオン 最強殺し屋伝説国岡 私闘編

映画情報
監督 阪元裕吾
脚本 阪元裕吾
主演 松本卓也 伊能昌幸 上のしおり 大坂健太
2025年/103分
あらすじ(公式HPより)
殺し屋真中卓也はアルバイトで生計を補う日々を送っていた。ある日、銃の調達依頼で大きなミスを犯し、命の危機に瀕していたところを、同じ殺し屋の国岡昌幸に救われる。しかし、その一件が原因で真中は殺し屋協会から謹慎処分を受けてしまう。そんな中、突然現れたのは京都殺し屋ランキング元祖1位である真中の父親。「まともに仕事もできねえなら、実家の手伝いせえアホ!」と一喝し、無理やり実家に連れ去ってしまうのだった―。
しばらくして国岡が様子を見に行くと、そこには淡々と家事をこなし、家の手伝いに徹する変わり果てた真中の姿があった。しかし国岡の「お前さ…本当は殺し屋やめたくないんじゃないの?」という言葉が、真中の眠っていた闘志に再び火をともす。自分の才能に限界を感じながらも父親に結党を申し込み、再び殺し屋として道を歩む決意を固める!父親を倒すため、熾烈な特訓の日々が始まった―!!
私的評価
★★★★★★★★☆☆ 8/10
感想
◉女の映画で稼いだ金で趣味の映画を撮る男
昨年発表された同監督作「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」は大ヒットと呼んでも間違いない話題作でした。これまでにはない豪華キャスト・公開規模で、僕の周りでも一気に知名度が上がったような気がします。それだけではなく、ベビわるシリーズはなんとドラマ化までされ、その勢いはとどまることを知りません。
また、2025年2月には石黒正数の名作漫画の実写版「ネムルバカ」のメガホンも取っていましたね。原作漫画が大好きな僕をしても満足のいく出来となっており、filmarksや映画.comなど、各種批評サイトでも高得点を維持しています。石黒漫画のファンなんて気難しいやつばかり(偏見)だからレビューなんて荒れそうなもんだけど、きっちり中央値も高そうな評価です。
そんなわけでいまやメジャー監督の仲間入りをしてしまった坂元監督ですが、何を隠そう、私は古参を名乗っていいくらいには昔から応援していました。その証拠に、
2018年の商業映画デビュー作から絶賛(?)してます。どや。
本作はそういったメジャーな活動で稼いだ金を使って作られた趣味全開の映画になっています。まさかこれだけ有名になったのに国岡の続きを作ってくれるなんて夢にも思ってませんでした。ちなみに、これまでのネームバリューでシネコン上映されてますけど、まず間違いなくミニシアターで流すレベルの規模感な映画ですので、ベビわるファンとかが何も知らずに見に行ったらおったまげると思いますよ。
これがベビわるみたいに、一気に予算がっつりで作られてたら逆に期待外れだったのも事実です。国岡シリーズはなんちゃってモキュメンタリーの安っぽい作りが特色みたいなものなので、これで正解だったと思います。てか、キャスト面とか考えたら前作「グリーンバレット」の方が金かかってそうだよね……。板尾創路とか出てたし……。
今作はこれまでのシリーズとは違い、国岡ではなくその友達の真中というキャラクターを中心とした話になっています。クオリティや雰囲気は同じですが、話の構造はかなり違う本作。果たして内容はいかほどか、次項にて語らせていただきます。
◉これはシリーズ最高傑作なのでは……?
結論から言わせていただければ、本作はシリーズどころか坂元監督作品群の中でも上位に入るくらいに好みの作品でした。めちゃんこおもろい。まず一番良いところなんですけど、ストーリーラインがきっちり王道に乗っかっていて安心して観れたというところ。どちらかというと変化球を好む監督だとは思うんですが、本作はダメ男の下剋上というベタ中のベタな話をきっちり魅力的に描けていたと感じました。
これまでのシリーズを見ていて、ぶっちゃけ真中というキャラクターを好きな人はほとんどいないと思います。そんな彼を主役において大丈夫なのかなという不安は上映中もしばらく続いていて、序盤はことあるごとに残念過ぎる真中の生態が明かされていくんです。語調は強いくせにヘタレだし、酒におぼれてやらかすしで、人間としての魅力は無に等しい。だから、いざ彼が一念発起してトレーニングを始めても、何というか乗り切れない気持ちがありました。
ただそこは、ちさととまひろという大人気キャラを生み出した監督の手腕。いよいよ決闘となる真中なんですけど、3週間修業した成果は全く出せず、あの手この手がすべて透かされてしまう。ただ、諦めずに歯向かい、卑怯でも勝てればいいとプライドをかなぐり捨てて格上の相手に立ち向かう姿に、いつの間にか感情移入してしまっていました。この辺のノせ方がホントに上手い。
そんで、その決闘シーン自体がすっげえいいんです。刀を使うシーンだからということであの「侍ストリッパー」の剣術指南の人をアクション監督にしてるんですけど、すっげえキレキレで。いつもの重厚なねちっこいアクションもいいんですが、今作のスピード感あるアクションも好きでした。銃を使った近接戦闘も多く、どことなくガンカタ味も感じられました。
一番好きなシーンはやっぱり国岡さん。真中が途中離脱して2対1になってしまうんですけど、かまわず両手で来いよ来いよ、みたいにするところ。くっそカッコいい。本作では明らかにバンプアップして迫力が増しており、半裸になるシーンがちらほらあるんですけどマジで強そう。
◉セリフ回しとギャグセンスは安定の良さ
坂元監督といえば会話シーンが好き、って人は一定以上いると思います。もちろん映画オタクの中でですけど。本作でもセンスあふれるセリフ回しは健在で、何気ない日常会話でもクスリとさせられるシーンが多いです。皆が殺し屋っぽいテンションでやり取りする中で、国岡さんだけが一般人的な目線で冷静に止めに入ったり、殺し屋としての仕事をたくさん撮っているはずの監督が決闘は法律で禁止されてるからダメと言いだしたり。温度差やギャップを上手く利用した会話が多く、システマチックに面白さを出してるんだなぁと感心しました。
一番好きなのは、決闘中に真中の親せきのお兄さんが「まだ決闘を止めるには早い、目が死んでない」みたいなことを言うんですけど、それを聞いて審判の大阪さんが「いや、あなた誰ですか」っていうシーン。そういや初対面でしたね、とシチュエーションで笑っちゃいました。これも映画を見ている視聴者と登場人物の視点とのギャップを利用した笑いで、面白い会話をきちんと客観視して作れている凄さを感じました。
ギャグもキレッキレで、色々あったんですけど、やっぱ一番はドロップキック専門の殺し屋ですよね。ドロップキック専門の殺し屋!? 自分で言ってても意味わかりませんが、それを出すセンスには脱帽してしまいます。ドロップキックで56人殺してるらしいですよ、彼。作中で一番体がムキムキなのもポイント高い。
最後に、やっぱりファンサービスというものを分かっているのも大きい加点要素だと思います。前作までに登場してたメインキャラを出すのはもちろんなのですが、「グリーンバレット」からも辻優衣さんが出てたりして、予習で見返していた私としては嬉しくなっちゃいました。
そんなわけで終始べた褒めな内容にはなっていますが、再度言いますけど映像のクオリティとかは所詮ミニシアターレベルではあるので、そのあたりは理解して見に行ってもらえると楽しめるかと思います。ぜひ前作までのシリーズとyoutubeの「殺し屋密着チャンネル」を鑑賞の上、劇場までどうぞ。
◉まとめ
・メジャーになっても初期作品を続けてくれる姿勢が好き
・アクションもストーリーもシリーズ最高傑作
・会話やコメディシーンは安定のクオリティ
・パンフはまだ買ってないんですけど、天内の元ネタは刃牙の天内悠……?
まとめると、メジャーに行っても低予算でファン向けに作ってくれるのって良いよね、な映画でした。これを見習って白石くんもコワすぎシリーズ作ってほしいです。僕はいつまでも新コワすぎシリーズの続編待ってますからね……!
【感想】風のマジム
風のマジム

映画情報
監督 芳賀薫
脚本 黒川麻衣
2025年/105分
あらすじ(公式HPより一部省略)
伊波まじむは那覇で豆腐店を営む祖母カマルと母サヨ子と暮らしながら契約社員として働いている。ただ過ぎる毎日に漠然とした不安を抱いていたある日、まじむの人生を大きく変える2つの出会いがあった。1つは、シュレッダー作業中に見つけた社内ベンチャーコンクール募集のチラシ。 もう1つは、いつも祖母と一緒に通うバーでラム酒の魅力に取り憑かれたこと。
まじむはラム酒の原料がサトウキビだということ、沖縄にはサトウキビがたくさんあるのにアグリコールラムは作られていないことを知る。 そこでひらめいたのが、「純沖縄産のラム酒」を作る企画だった。 まじむの思いつきから始まった企画は、様々な立場や価値観の違いを浮き彫りにしつつ、それらを巻き込み、大きな渦となり、思いがけない方向に進んでいくのだった。
私的評価
★★★★★☆☆☆☆☆ 5/10
感想
◉公式サイトのあらすじがくそ長い映画は信用できない
あらすじが約1,300文字と馬鹿みたいに長いので省略させてもらいました。僕のちょっとしたこだわりというか、偏見なんですけど、公式サイトのストーリー紹介が長すぎる映画ってどうも身構えてしまうところがあります。だって、映画がちょっと気になるくらいの感覚でHP見に来た人が1300文字のあらすじを読みますか?って話ですよ。熱が入りすぎて観客のことを考えていないか、あるいは逆に適当に作ってるかの2択だと思っちゃいます。
本作に関してはちょっとどっちか判別付かないですけど、ただ言えるのは中盤くらいの展開まで書いちゃってるのは確実に映画の楽しみを削っちゃってるなあと。ホームページ経由で映画見に行く人なんて一握りしかいないんでしょうが、例え原作ありの映画であってもネタバレは極力無くしてほしい派の僕としては、そこまで書かれたら話の展開も分かるし見に行かなくていいか、ってなっちゃいます。まあ映画見てからHP見たので後の祭りではあるんですが。
はい、いきなり映画とはあまり関係のないところからレビューを始めているんですが、ぶっちゃけてしまうと、映画自体がかなり薄味で雑なところも目立つ内容であり、特段書くようなことも少ねえなって思っちゃったからだったりします。テーマや題材はとても独特で面白いとは思うんですが、演出だったり脚本だったりがあまりに平坦で、良さを生かし切れていないんじゃないかなと感じました。
伊藤沙莉さんはじめ、公開規模にしては俳優陣も豪華でお金かけてそうな気配はあるんですけどね。その割にはロケしている範囲が狭いのか分かりませんが、似たようなカットや構図が多くて画が全体的に退屈だったのもマイナスです。あとはどうしてそのカットを選んだのか分かんないとこも多くて、例えば客がおばあの豆腐をめっちゃ美味そうに食ってるシーンがあるんですけど、肝心の豆腐は映らない。製造過程はこれでもかと時間かけて撮ってるんですけど、いやいや、完成してる美味そうな料理を映せよと。
演出関連では色々引っかかるところはあったんですけど、一番許せなかったのはラストシーンですね。ついにラム酒が販売される!って祝宴が開かれるわけなんですけど、そこでこの映画の冒頭からラストまででメインとなっていたシーンが走馬灯のように流れるわけなんです。まあホントに走馬灯みたく短時間でぱっぱと映せばまだ許せるんですけど、これがめちゃんこ長い。ちょっと感動しそうになってた僕を「これ絶対尺稼ぎじゃん!」と現実に引き戻してくれました。
◉ホントに見たいところを見せてくれないもどかしさ
もう一つ悪目立ちしていたと感じた部分といえば、展開、あるいは感情の動き方の描写がすっげえ雑だなと思いました。あらすじにも書いてるんですけど、この映画の見どころというか、大黒柱的なテーマとして「様々な立場や価値観の違いを浮き彫りにしつつ」主人公のまじむを中心に皆が手を取り合って理解していく、みたいなのがある、はずなんです。だけど、その肝心の過程が感じられず、いつの間にか問題解決、みんな仲良し!みたいになってるところが多い。
一番顕著な例でいうと、ラム酒の工場を作るために離島の人々を集めて説明会を開くシーンがあるんです。まじむが頑張って説得しようとするんですけど、村長が断固として反対してて、場はいっきにお葬式ムード。ほんじゃま解散するか……ってなったところにアグリコールラムが届いて、実際に飲んで判断してくださいよ!って流れになるんです。そんで村長が飲んでみて「美味い」って言って……終わり!
いや、あんだけけなしまくってたのに謝罪の一言もなしかよ……。ラストシーンにも、いかにも仲間ですって感じの面で出て来てるんですけど、こっちからしてみれば文句ばっか言ってた爺さんって印象だけなのでなんの好感もない。てか、その後特に描写もなく、いつの間にか工場経つこと決まってるし、島民全員大賛成って雰囲気だし、飛ばしてた時間の間に金でもばらまいたのかって気持ちにさせられます。
他にも滝藤賢一さん演じる醸造家が、それまで仕事を断っていたのにラスト直前で心変わりするのも唐突すぎて意味わからんし。そうかと思えば、特に重要ではなさそうなシーンを長尺で入れたりするので、構成(編集なのか?)はあまり褒められたものではなかったと思います。
◉なろう系主人公に通ずるイラつき
これは自分が会社で働いているサラリーマンだからというのが大きいのかもしれませんが、まじむのやることなすことがマジで社会人としてあり得ないくらい不誠実というか、子供みたいな理屈で周りをかき回しまくる。私の出した企画だから私が好きにしてもいい、って会社を舐めてるとしか思えない雰囲気がにじみ出ていて、社畜の僕としては噴飯ものでした。
何がダメかって、まず報連相がなってないんですよ。上司が見つけてきた醸造家が気に入らないからと言って、地元の醸造家に勝手に変えちゃいましたってのをプレゼン当日まで黙ってる。いや、確かに嫌な奴ではあったんですけど、向こうも仕事する気満々だったろうし、違約金とかどうするつもりなんだろうと思っちゃいました。
そのプレゼン自体も反則技だったのも許せません。屋上使って酒をふるまって判断力を鈍らせたところに沖縄でラムを作ることはこんなに素晴らしいんだよーと吹き込む。名前は忘れちゃいましたけど、社内ベンチャーでもう一人残った最終候補の人がかわいそうで見てられませんでした。クッソ真面目にパワポで資料作って、きちんと社会人らしくルールに則ったうえで戦ってるのに、あんなことされたらキレてもいいと思います。
これを爽快な下剋上だ!とか言っちゃう人は会社で働いたことがない方なんでしょうか? 終わり良ければすべてよしではありません。プレゼンで負けた何とか君が草葉の陰で泣いてますよ。まあ色々書いたんですけど要するに、本来であれば主人公に感情移入してこその内容である映画だと思うので、そのあたりもっと丁寧にキャラクターづくりをしてほしかったと感じました。
こんだけぼろくそに書いてはいますが、レビュー自体は★×5でそこそこ。主人公のキャラだったり話の展開こそ気に食わないものの、酒造りへの愛情だったり、ストーリー自体のユニークさだったりは感じられた作品ではあったと思います。僕にはあれでしたけど、刺さる人には刺さる作品ではあるなあと。なろう系とか好きならいいんじゃないですかね(適当)
◉まとめ
・テーマは面白いのに内容は凡
・いつの間にか問題解決!では観客は納得しない
・まじむ「あれ、私また何かやっちゃいました?」(就業規則違反)
・自覚してないだけで、もしや映画じゃなくて伊藤沙莉さんが嫌いなのでは……?
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まとめると、お仕事映画としては良い出来だけど、その他要素が足を引っ張ている、な映画でした。沖縄映画いっぱい出てる割に、これと言って当たりがない2025年……。
【感想】〇〇式
〇〇式

映画情報
監督 近藤亮太
脚本 くるむあくむ 近藤亮太
主演 九十九黄助 吉田ヤギ 畦田ひとみ
2025年/41分
あらすじ(公式HPより)
この式は、 一体なんのために開かれたのか?
“式”とは。 何者かがいつの間にか始めたもの。 一度始まると、止めることはできないもの。 意味が生まれる前に、すぐそこに在るもの。
「〇〇式」は、どこかに存在する、とある“式”の話。 それは祝福か、別れの儀式か ──── 。
その答えはどこにあるのか。
私的評価
★★★★☆☆☆☆☆☆ 4/10
感想
◉41分フルプライスで見るほどのもんじゃない
これも時代の流れなのか、昨今の邦画では上映時間の長尺化が進んでいる一方で、ショートフィルムとは言わないまでも短めの映画が公開されることがよくあります。昨年話題になった「ルックバック」(58分)なんかがその代表例でしょうか。こちらは上映時間を考慮してか1700円という鑑賞料で統一されていました。それでもなお割高に感じてしまいますが、藤本タツキ先生の原作ネームが丸ごとついてくるという特典付き。ちな、僕も持ってます。
それに引き換え本作では、特別価格も設定しておらずフルプライスにて勝負していまして。特典として赤い封筒も貰えるんですけど、「ルックバック」と比較するとどうしても見劣りしてしまいます。じゃあ映画の中身が良かったらええやろがい、という話なんですが、面白くないことはないんですがわざわざ劇場で2000円払ってみるほどのもんじゃねえなってのが正直な感想でした。あんまり好きな言葉じゃないので使いたくないんですけど「コスパ」が悪いです。
どこが一番微妙だったかっていうと、やっぱりこういう短時間の作品ってどこかに突出してないといけないと思うんですよ。何度も例に出して申し訳ないですけど、「ルックバック」だと熱量溢れる作画に加えて、衝撃のストーリー展開があるわけじゃないですか。本作はというと、一応どんでん返しというか、それなりに練った展開があるわけなんですけど、予想を裏切るほどかというとそうでもない。どちらかといえば、もしかしてこういう話なのかな、ってのを地で行くようなストーリーでした。
監督の近藤亮太さんですが、「イシナガキクエを探しています」「飯沼一家に謝罪します」とか滅茶苦茶好きで、かなーり期待して前作の「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」見に行ったんですけど、なんか普通のホラーって感じで拍子抜けしてしまったんです。出来は悪くないんですが、求めている方向性とは違うというか。本作は予告見る限り、なかなか「ぽさ」を感じる映像だったので次こそは、って見に行ったんですけどね……。
思うに、雰囲気作りとか不気味さの表現とかはとてもうまいと思うんですよ。本作にしても前半戦はかなり引き込まれる恐怖があって、ジャンプスケアに頼らない和製ホラーとしての完成度も高かったと思うんです。それは前作もしかりで。ただ、そこから映画を終わらせるため、整合性を取る流れというか、エンディングへの向かわせ方というか、そのあたりがあまり上手ではないと感じました。TXQ作品群では視聴者に考察させるために、終わりはぼかしてる作品ばかりだったから気にならなかったのかもしれませんけど。
◉前半の異質さから後半の平凡さへ
値段はさておくことにして、内容としてはどうなのかといえば、上にも書きましたが、前半の式が行われてる部分はホント面白かったんです。新郎がいない結婚式、着々と進行していくように見えて、目を凝らせば不協和音のような違和感がたくさんある。空気感もいいですが演出的にもゾワリとくるものが多くて楽しかったです。
友人のスピーチがすべて過去形で語られていたり、なにやら考察のしがいがありそうなビデオが上映されたり、司会のセリフも意味深だし、おいおいこれはどういうことなんだいとワクワクゾワゾワが止まりませんでした。中でも来場者たちが一斉に後ろを向いて主人公と目が合うシーン。「飯沼一家」でも似たようなシーンがありましたけど、視線の恐怖とでもいうのでしょうか、描き方がとても不穏で好みでした。
そしていよいよ後半戦なんですけど、ここからが問題。式がひと段落して真相が明かされていく展開になるんですが、このあたりがホント蛇足というか、それまでのある種神秘的な雰囲気をぶち壊すチープさを感じてしまいました。オチまでの流れも予定調和。ああそうだよねの連続で驚きがなかったのも痛い。
本来であれば、そういったところを俳優陣の演技でカバーしてシーンの価値を上げていくんだと思うんですけど、良くも悪くもメインキャストが半分素人なのでそこまでの力量もなく、なのでダイレクトに展開のつまらなさが表面に出てしまっていると感じました。いや別に旧かいばしら現九十九さんのこと嫌いじゃないんですけど、これまで出てる映画はいわゆる素人役だったからよかったものの、ここまで本格的に俳優として出るんなら、そりゃ粗も目立っちゃいますよということです。
映画としては微妙なのかもしれませんが、式の内容をもっと充実させて、あえて後半のネタばらしゾーンは省いた構成にしたら、評価は違ったかもしれないと思います。一般層からは結末をきっちり描かないなんてふざけてる! と批判されるかもしれませんが、この映画を見に来てる人のほとんどがモキュメンタリー作品や変わったホラーのファンなんですから、みんな満足してくれると思うんですよ、私は。
◉まとめ
・せめて「ルックバック」と同じ鑑賞料1700円にしてほしかった
・〇〇式の雰囲気は神! 後半はぶっちゃけ蛇足……
・短い作品だと感想も短くなっちゃうね
まとめると、最後までトゲトゲしててくれればあるいは……な映画でした。長時間映画と短時間映画、両者ともに増えてますけど、最終的に生き残るのは果たしてどちらになるのでしょうか……
【感想】俺ではない炎上
俺ではない炎上

映画情報
監督 山田篤宏
脚本 林民夫
2025年/125分
あらすじ(公式HPより)
大手ハウスメーカーに務める山縣泰介(阿部寛)は、ある日突然、彼のものと思われるSNSアカウントから女子大生の遺体画像が拡散され、殺人犯に仕立て上げられる。家族も仕事も大切にしてきた彼にとって身に覚えのない事態に無実を訴えるも、瞬く間にネットは燃え上がり、“炎上”状態に。匿名の群衆がこぞって個人情報を特定し日本中から追いかけ回されることになる。そこに彼を追う謎の大学生・サクラ(芦田愛菜)、大学生インフルエンサー・初羽馬(藤原大祐)、取引先企業の若手社員・青江(長尾謙杜)、泰介の妻・芙由子(夏川結衣)といった様々な人物が絡み合い、事態は予測不能な展開に。
無実を証明するため、そして真犯人を見つけるため、決死の逃亡劇が始まる――。やがて明らかになる#ネタバレ厳禁な衝撃の真実。その“真実”はあなたの目で確認してほしい――
私的評価
★★★★★★★☆☆☆ 7/10
感想
◉阿部寛を堪能せよ
前回感想を書いた「宝島」が期待に対してそこそこな作品だったのに対して、逆にこちらは期待してなかった分かなり面白く感じる作品でした。色々よかった点はあるんですが、まずはなにより、阿部寛という男を主役としたキャスティングが見事という他ない。若者をバカにする老害思考、無自覚に他人から嫌われまくる気遣いできない男、それなのにどこか憎めない不思議な魅力を持った中年男性。これホントに阿部寛さん以外が演じてるところが想像できないくらいにハマり役だったと思います。
50代男性なのにマラソンを趣味でやってるから長距離走って逃げられた、っていうちょっと現実味のない設定も阿部寛なら一発で解決です。物語後半で半裸になるシーンがあるんですけど、御年61とは思えない肉体美を披露していて、これなら走って逃げられるかぁって説得力がある。いやホントマジでこのシーンだけでも全男性が見てほしい。これが61歳の体か……?(恐怖)ってなるから。
「結婚できない男」や「TRICK」でもそうでしたが、やっぱり阿部さんは一見強キャラっぽく見えるけど実は欠点だらけのダメ男を演じているときが一番輝いていると思います。見た目のいかつさとのギャップがいいんですよね。あと、インターネットに弱いってところも本人とリンクしていて面白かった。世界一軽い有名人のホームページとして有名なあれを思い出しますよね。いまだに平成初期みたいなトップページには今作に出演している情報もしっかり載ってました。
なんかずっと阿部寛の話しかしてないので、映画本編の話に入ります。本作ですが、去年映画化もされた「六人の嘘つきな大学生」で知られる浅倉秋成さんの小説が原作となっています。「六人」の方は小説も読んだんですけど、こちらは未読で鑑賞。ミステリという形式上、ネタバレなしで見れたのは良かったんですけど、お話自体は割とよくある流れといった印象です。
物語序盤で56歳なのに小学生の娘・・・?と気になってしまったせいか、根幹となるあるトリックに気づいてしまったので、後半のどんでん返しにもそこまで度肝は抜かれなかったんですけど、テーマのキャッチ―さだけでなく、きちんと構造的な面白さも用意されていたのは好印象です。ただ、その種明かしが結構分かりづらく説明もないので、薄っすら気づいてた僕みたいな人間にとっては理解できたんですけど、ぼーっと見てた人は何が起きているのか分からなくて面食らってしまうんじゃないかなと思いました。映画や小説ではよくある仕掛けなので、これくらい分かるだろという判断なんだと思うんですけど、ちょっと観客を信頼しすぎて雑になっていたような気もしました。
◉「炎上」要素はあんまりない
追加で気になった部分というか、ちょっとタイトル詐欺だろと思ったのは物語中盤あたりからSNS要素はかなり薄まっていたところです。予告だけ見ると、もっと謂れのない罪でネットで炎上しまくってハチャメチャに叩かれるみたいなのを想像してました。前半部分はまさにそんな感じで、阿部寛の雑コラとかめっちゃ面白かったです。ただ、早々に警察から追われる展開になってしまうので、ネットのおもちゃどころではなく、ガチの犯罪者扱いになってしまうんですよね。そうなると、よくある逃亡しながら真実を探す系のサスペンスになってしまい、作品独自の味というのは控えめになってしまった印象です。
あとは、これもお約束なのかもしれませんが、警察の無能さが天元突破してます。主人公たちを活躍させるために警察がいわゆるかませ犬的な存在になるのって、僕個人としては別に嫌いな展開ではないんですけど、連続で殺人が起きてるのに真犯人にかすりもしないし、対応や捜査についても露悪的に書かれすぎてるしでちょっとやりすぎ感がありました。まあ、原作ありきなのでそこまで突きすぎるのもあれかもしれないですけど。
次に演出ですけど、こっちはとっても良かった。ストーリーの粗を気にはさせないくらいには巧みだと感じました。特にコメディシーンについてはかなり好み。これは阿部寛さんのキャラクターに引っ張られてるってのもあるかもしれませんが、それにしても彼の利用価値というか、どう見せれば光るのかを理解しきってやってるなーってシーンが多かったです。絶対に監督は阿部寛さん大好きでしょ。
打って変わってシリアスなシーンも悪くないと思いました。終盤での畳みかけは息をするのも忘れるくらいの没入感。賛否は分かれるかもしれませんが、ラストの演出も大好きです。ネットで阿部寛を晒していた人たちや、犯人と決めつけて追いかけていた警察たちが「俺は悪くない」って言ってるのに対し、冤罪で炎上していた阿部寛が「俺が悪かった」と家族に対して謝罪する。若干臭みはある演出なんですけど、そういうストレートなのに弱い僕としてはホロリと涙腺がやられてしまうシーンでした。
◉ひろしと愉快なキャスト達
なんか終始阿部さんの話ばっかしてるんで誤解されるかもしれませんが、この映画なんと阿部寛以外にもメインキャストが存在します。とはいっても、なんか皆影が薄くて最終的には阿部寛の思いでしかないのも事実です。そんな中で印象に残っている他のキャストとしては、やっぱ芦田愛菜ちゃん。ちょくちょく映画には出てるので僕はそんなにですけど、久しぶりに彼女を見る人はおっきくなったと驚くんじゃないでしょうか。
演技が特段光っていた、とかはないんですけど、声を荒げてキレるシーンは記憶に残ると思います。予告にもきっちり入ってますね。演じているキャラクターも、普段みたいに理知的で聡明な女の子、って感じだったのでそのギャップはかなり衝撃的でした。
キャストについてもう一歩余計なことを言ってしまうと、長尾謙杜さん。「室町無頼」の時も思ったんですけど、ちょっとシャレにならないくらい個人的に演技が好きじゃない。こんなこと言ったら怒られるかもですけど。何というか、声とかはまだ許せるとして顔の表情を見てるとこっちが不安になる感じで。いや、ファンも多くて映画もバンバン出るくらいに重宝されてるのは分かるんですけど、人気と演技が釣り合ってない感じが凄くします。「室町無頼」もそのせいであんまり好きじゃない映画に僕の中で分類されちゃいましたし。
一時期に比べてアイドルを映画に出してやだーみたいな空気って薄くはなってきてるんですけど、それってジャニーズ達の演技力がめきめきと上がってるってのも大きいんだと思います。そんな中、客寄せパンダとして出演! というのもまだあるのは事実。だいたい、我々のような映画大好きナードはなにわ男子というグループをそんなに知らないことも大きいのかもしれません。そんな感じで色々言いましたけど、長尾さんは出ている映画にも恵まれてまだマシな方だと思います。「忌〇島」とかいうぶっちぎりクソ映画に出ているメンバーもいるんだし。
最後のメインキャストの一人である藤原大祐くんは「リゾートバイト」の人です。彼がどんな大作映画に出ようと、向こう10年この地位は揺らぎません。
◉まとめ
・とにかくずっと阿部寛まみれ
・ストーリラインは引っかかるものの、演出面は好み
・正直阿部寛以外のキャストはちょい微妙
・「六人の嘘つきな大学生」はあんま評判良くないので見てません
まとめると、キャッチ―なテーマの割にしっかり中身の作られたサスペンスの良作阿部寛、な映画でした。レビュー見返すと批判的なこと書いてる部分が多いけど、普通に面白い映画でしたよ。
【感想】宝島
宝島

映画情報
監督 大友啓史
脚本 高田亮 大友啓史 大浦光太
2005年/191分
あらすじ(公式HPより)
1952年、沖縄がアメリカだった時代。米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちがいた。いつか「でっかい戦果」を上げることを夢見る幼馴染のグスク(妻夫木聡)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)の3人。そして、彼らの英雄的存在であり、リーダーとしてみんなを引っ張っていたのが、一番年上のオン(永山瑛太)だった。全てを懸けて臨んだある襲撃の夜、オンは“予定外の戦果”を手に入れ、突然消息を絶つ…。
残された3人は、「オンが目指した本物の英雄」を心に秘め、やがてグスクは刑事に、ヤマコは教師に、そしてレイはヤクザになり、オンの影を追いながらそれぞれの道を歩み始める。しかし、アメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境では何も思い通りにならない現実に、やり場のない怒りを募らせ、ある事件をきっかけに抑えていた感情が爆発する。
やがて、オンが基地から持ち出した“何か”を追い、米軍も動き出す――。消えた英雄が手にした“予定外の戦果”とは何だったのか?そして、20年の歳月を経て明かされる衝撃の真実とは――。
私的評価
★★★★★★☆☆☆☆ 6/10
感想
◉3時間越えはやりすぎなんよ
だって映画2本分ですよ。あの長いことで有名な『アベンジャーズ エンドゲーム』よりもさらに長いなんて。さすがに劇場で見るにはハードすぎる。正直に言うと、最後の方はおしっこ我慢してました。
上映時間が長い=悪い映画、なんてことは言わないんだけど、本作に関しては本当にその尺でやる必要があったのか疑問に思う部分も結構多くて。本作はメインキャラクターが3名いてそれぞれのお話が交互に進んでいくような形をとってるんですけど、一つ一つの場面が長すぎて、映画としての連続性が失われてしまっているように感じました。だから感情移入がしにくい作りになっているんじゃないかと思います。
一番顕著なところでいうと、妻夫木聡がアメリカの諜報部員と手を組んで事件を捜査する、って話の流れになるんですけど、しばらくその話は出てこなくて、大体1時間後くらいに「いやあ、お前は優秀な捜査官だぜー」ってパーティで褒められるところが出てくるんです。それまでの過程とかが全部すっ飛んでるので、いつの間にそんな風になってんだと観客は置いてけぼり。そのくせ、諜報部員は重要キャラクターで、後半に妻夫木聡と「トモダチ」だなんだと感動的なシーンがあるんですけど、肝心の繋がりを描写していないんで、急に本人たち同士でそんなこと言われても、って冷めちゃいました。
そうかと思えば、意味ありげにヤクザの親分として登場したピエール滝は登場シーンだけでその後全く出てこなかったり。思い返してみれば、いやこのシーンやる意味あったか? というところが非常に多かった。そのくせ、上で挙げたようなメインの展開に直接つながるシーンの描写が不足していたりと、非常にバランスの悪さを感じました。
説明的な場面を入れるよりも、登場人物の心理描写や戦後沖縄の独特な雰囲気を見せることに重点を置いていることはよくわかるんですけど、観客を楽しませることよりも自分が表現したいことの方を監督が選んでるような感じがして、もやもやしちゃいました。映画は芸術作品だ、と捉えるならそれでいい気はしますけど、やっぱ楽しませてなんぼな媒体だと僕は思うので、その辺はもう少しユーザーフレンドリーな感じで作ってほしかったです。
◉演出に関しては邦画最高峰の出来
ここまで批判的な意見を言っておきながらなんですけど、盛り上がるシーンでのぶち上げ方に関しては手放しで褒められるほど素晴らしかったと思います。特に予告映像やポスターにもなってるコザ暴動の映像は食い入るように引き付けられました。無数の人が織りなすカオスな熱気、熱に浮かされる、なんて表現がありますが、まさに観客を飲み込むスケールがある名シーンだと思いました。
飛び交う民謡と怒号、舞い落ちる火の粉に転がるアメ車。みんながみんな、好き勝手暴れているはずなのに、導かれるようにして一方向へ足並みをそろえていく。その流れに抗えず、哄笑しながら夢遊病のようにさまよう妻夫木聡。現実味を伴う悪夢みたいな空気感が徐々に見る側にも火をつけていくみたいな。ホント、あのシーンの完成度だけで見れば傑作と言っても過言ではない。
そこから基地に侵入するまでの一連の流れもスピード感があってよかったんですけど、ラストに向かって少し失速してしまったのが残念でした。これも時間配分が悪いというか、せっかく最高潮に盛り上がった観客側の感動がだらだらと続く展開で冷やされてしまった印象です。物語的にも「謎」を解決する必要はあったと思うんですけど、そのための主人公たちの行動があまりにストーリーの都合で動かされすぎているというか。いや、あんだけ息もってんなら病院行けば助かるやろ、とツッコみたくなりました。
ホント、随所での雰囲気だけでいえば傑作の素質は持ってる映画だと思うんですよ。荒廃した沖縄の人々の住処に対し、明らかに浮いてるアメリカ人用の酒場とか、戦後の歪な沖縄をかなり特徴的にとらえていて面白い映像になってるし、所々に挟まれる豊かな自然の神秘的なカットも冗長すぎず良い感じ。そう考えると、やっぱ映画に撮って編集作業って滅茶苦茶大事なんだなと思わされました()
◉キャストは正直中途半端な豪華さ
最後にキャスティングについてですけど、正直方向性が良く分かんない感じだなって思います。豪華キャスト、と呼ぶにはあと一歩足りない感じですし、かといって無名の俳優を重宝しているかというとそうでもない。もちろん、妻夫木聡・広瀬すずを筆頭に一流のキャストを集めてはいるんですが、長すぎる上映時間に対して今一つ充足感がない。どっちつかずな印象は否めないです。
もちろん僕だって映画好きを自称してるんで、キャストが豪華だからすげー映画!なんて単調な理論を言うわけではないんですけど、こんだけの規模の映画なんだからもっとキャスト面でもできることはあったんじゃないかなって思っちゃいます。くそ長い映画なのにメインキャストが絞られてるから、絵面が変わんないってのもあるかもしれません。
キャスト面で言及するなら、まずは広瀬すずさん。初期シーンでざんばら髪の芋っぽい感じだったんですけど、あれであそこまで可愛いのは反則じゃないでしょうか。最近は可憐な少女から落ち着いた大人の女性を演じることが多くなってきてますが、ぶっちゃけまだまだ少女役でもいける魅力はあると思います。広瀬すずの可愛さ再確認という意味では、大変意義のある映画ではないかと。
あとは窪田正孝さん。前に見た「悪い夏」でもチンピラ役でしたけど、もうすっかりそんな感じで定着してしまった感があります。昔は正統派な主人公、って感じの役どころが多かったんですけど、でもまあ幸の薄そうなチンピラが似合うから仕方ない。
んでもって、瑛太こと永山瑛太さん。ストーリー的に出番は少なめなんですけど、存在感としては凄まじかった。あんだけ小汚いタンクトップだろうが歯がくっそ汚かろうが、カッコいいのはずるい。消えた英雄、という役どころに恥じないオーラ。子のキャスティングに関しては満点と言ってもいい。主役である妻夫木聡さんを食ってしまっているところが賛否分かれる感じでしょうか。
◉まとめ
・さすがにこの長さを劇場で見続けるのは苦痛
・場面場面での演出はとても良い
・映画の規模にキャスティングが釣り合ってない感じ
・沖縄弁に字幕は付けてほしかった
まとめると、20年間という沖縄統治時代の長さを良い意味でも悪い意味でも感じられる、な映画でした。それはそうと、今年沖縄映画多くないですか? 「風のマジム」も見たんでできればそっちもレビューしたいです。
【感想】リンダリンダリンダ 4K
リンダリンダリンダ 4K

映画情報
監督 山下敦弘
2005年/114分
あらすじ(公式HPより)
過ぎていく時間 何よりもやさしい 何よりもあたたかい
⽂化祭前⽇に突如バンドを組んだ⼥⼦⾼⽣たち。
コピーするのはブルーハーツ。ボーカルは韓国からの留学⽣!
本番まであと3⽇。4⼈の寄り道だらけの猛練習が始まった!
私的評価
★★★★★★★★☆☆ 8/10
感想
◉ガールズバンド系作品の始祖的存在
普段は最新作以外レビューはしないんですけど、好きな作品のリマスター版公開ということなので、せっかくですしその記念でレビューしました。この映画が好きなので山下敦弘監督作は良く見に行くんですが、残念なことに本作以外はあまり合いません。「カラオケ行こ!」とか世間の評価は高いんですが僕はダメでした。「水深ゼロメートルから」なんて、昨年のワースト10に入れるくらいにはアレでしたし。
なんでダメなのかなと分析してみたんですけど、この映画だと香椎由宇さんが見ている夢のシーンあるじゃないですか。ラモンズさんとかピエールさんとかが出てくるあれです。あのシーンだけ苦手なんですよね。山下監督のウケ狙いというか、コメディ的な演出があんまり好きじゃないのかもしれません。「カラオケ行こ!」とかそれが顕著ですもんね。
話がそれそうなので戻します。そんな感じで山下監督作は肌に合わないんですけどこの作品は別格。監督インタビューにも「監督しといてなんですが、自分にとって“奇跡の一本”だと思っています」とありましたが、まさにその通りだと思います。この作品は普段邦画なんて見ない、みたいな人に是非見てほしい作品となっております。特にアニメ好きの人は必見で、
「けいおん!」「ぼっち・ざ・ろっく!」「ふつうの軽音部」
ざっと上げただけでも上記のように、アニメ・漫画業界では毎年のようにガールズバンドものがヒットし続けています。おそらく本作はその先駆けといいますか、これらの作品群に多大な影響を与えた映画だと思います。時期的にも「けいおん!」連載開始が2007年なので、もし本作が世に放たれてなければ、これらの作品は生まれてなかったと言っても過言ではない、はず。なので普段映画なんて見ないオタク君たちもこの映画は必ずチェックするように(上から目線)
冗談抜きにしてもこの作品からテンプレになった部分ってホント多いと思うんです。例えば、4人組のガールズバンドってのからそうですし、その中でもベーシストは気難しいというか少しズレた、変わった人物なのもあるあるですよね。ガールズバンドが男性ボーカル曲のカバーをするのも今では当たり前ですけど、この作品から主流になったような気もします。映画単体で見てももちろん面白いんですけど、そんな感じに歴史建造物的な価値としても非常に興味深い作品です。
3日後に迫った文化祭のために猛練習するというシチュエーションなんですけど、空気はゆるゆるで真剣なのかふざけてるのか分かんない、そんな日常系みたいな雰囲気も後続作に受け継がれてますよね。学校にこっそり忍び込むところとかめっちゃ好きなんですよ。もちろん、ラストのライブシーンもいいんですけど、下手したらそこより好きかもしれません。
◉改めて見た感想としては・・・
そんで見てきた感想としてはなんですけど、思い出補正はかなり高いものの、今見ても十二分に楽しめる作品だなと再認識できました。感動して涙したわけでも面白すぎて捧腹絶倒したわけでもないんですけど、なんていうんですか、今見ても十分個性的な作品だなあって。
映像も校舎内での生活をのんびり映した長回しとかが多くて、空気感が凄くスローというか独特なんです。ドラマチックな展開とか映画的な盛り上がりってかなり少ないんですけど、ホンモノの高校生の日常を覗き見ているリアリティが凄くて、映画見ながら自分の高校時代とか思い出しちゃうような感じなんですよね。ノスタルジー。ガラケー懐かしーとか、この映画の影響でカラオケでリンダリンダ歌って盛り上がったなーとか。映像的なクオリティが高いってわけじゃないんですけど、没入感がかなりある映画だと思います。
文化祭でライブやるけど当日何か問題が起こるってのはお約束なんですけど、それが自分たちが徹夜で練習してたから寝坊した、っていうハプニングの起こし方もザ・高校生って感じでいいですよね。問題解決の仕方も突飛なアイディアというわけではなく、ただ雨の中を全力疾走。平凡な域を出ないストーリー展開のおかげで、自然体な雰囲気をずっと壊さず維持し続けていました。
ただ、後追い作品がいろいろ出てきた現代に見るとやっぱり物足りなさは感じるというのが正直なところ。例えば、韓国からの留学生という特徴あるバックボーンのキャラクターを主役にしてるにもかかわらず、それを活かす展開が少ない。単純に意思疎通の難しさと、話が噛み合わない面白さのためだけの設定のように思えます。一応、若き日の松山ケンイチが韓国語で告白するっていう名(迷)シーンはあるんですけど、特に根幹にかかわる内容でもないですし。
あとは「主人公」というポジションが確立せず、ふわふわしているのも少しまとまりのなさを感じました。最初は前田亜季演じるドラマー響子が中心のカットが多く、スポットライトも当たってるんですが、ソンさんが合流してからは彼女と香椎由宇とで視点の切り替わりが激しく、あれみんな主人公として均等にするのかなって思えば、明らかに関根さん演じる望だけ出番が少なかったり。ある程度崩しているぐらいなら映画の『味』として楽しめるんですけど、ここら辺は明らかにバランスが悪かったです。
とまあ、現代目線で見れば粗が多いように感じるんですけど、これも映画鑑賞後に冷静に振り返ったから出た感想であって、上映中はもうエモーショナルの渦中なので、そんなことは考えていませんでした。これは別に自分が初見ではなかったからではないと思います。高校時代を通った人間なら必ず惹きつけられる魔力。言葉では表せないそんな力がこの映画にはあるのではないでしょうか。
◉キャストは今見ても最高!
最後にキャスティングについてなんですけど、これはもう言うことなしですよね。バランスがいい。特筆するならば、ペ・ドゥナと香椎由宇さんでしょうか。ペ・ドゥナさんはこの時27歳だったらしいんですけど、とてもそうは見えない透明感ある役どころを演じていたと思います。歌の上達ぶりもかなり自然で凄いんですけど、なんといっても日常シーンに見せるとぼけた感じがとてもかわいい。さすがは未来のハリウッド女優、半端ないぜ。
ついで香椎由宇さんなんですけど、やっぱダントツで顔が良いです。顔が左右対称すぎてドイツの医者に標本にされかけたことがあるらしいです、ホントかは知りません。僕は「ウォーターボーイズ」のドラマで初めて見たんですけど、子供ながらに思いましたもん、いや顔良すぎやろって。ホント、全盛期の香椎由宇さんって邦画界歴代で見てもトップクラスなんじゃないでしょうか。
ただですね、顔が良すぎて周りから明らかに浮いてるんですよ。こんな女子高生おるかい、みたいな感じで。演技ももちろん素晴らしいんですけど、それも相まって更に非現実感が増してる。本来であれば自然派な雰囲気のこの映画の空気感をぶち壊してしまいかねないんですけど、これが奇跡的にマリアージュしてる。なんでかは分かんないですけど違和感ないんです。ホント何でですかね。ずっと俳優業は休止されてましたけど、ここ最近復活の兆しを見せているので、今後の活躍を楽しみにしてます。
◉まとめ
・これを見ずしてガールズバンドものは語れない
・空気感は今見ても唯一無二
・世代によっては刺さらない可能性もあり
・香椎由宇姉貴の全盛期。もはや神々しい
まとめると、特別なことは起こらない、だからこそ特別な青春を感じる、な映画でした。ちなみにブルーハーツで一番好きなのは「TRAIN-TRAIN」です。
【感想】ChaO
ChaO

映画情報
監督 青木康浩
脚本 青木康浩
2025年/89分/G
あらすじ(公式HPより)
人間と人魚が共存する未来社会。 船舶をつくる会社で働く サラリーマンのステファンは、 ある日突然、人魚の王国のお姫様・ チャオに求婚される!! その前代未聞の求婚は 瞬く問に世界中に広がり、 「2人の結婚は人間と人魚、両族の 友好関係を樹立する」として、騒ぎ立てられる。 ステファンはなぜチャオに求婚されたのか分からないまま、 周りに流されて結婚することに!
人間の世界に慣れていないチャオとの生活は ハラハラ・ドキドキの連続! だけど、純粋で真っすぐなチャオの愛情を受けて、 ステファンも少しずつあたたかい感情を持つようになっていき―― 2人の恋の行方はどうなる!?
私的評価
★★★★★★★★★☆ 9/10
感想
◉何が嫌いかより・・・
この映画、欠点を上げればキリがないくらい、決して出来の良い作品とは言えません。例えばですけど、一番気になったのはやっぱり声優面。主人公たちを俳優が演じてるんですが、ぶっちゃけジブリ作品とかと比べてもとんでもないレベルで酷いです。山田杏奈さんの演技はまだ許容できるとして、男性陣の鈴鹿央士さん・太田駿静さんあたりはノイズになりかねない出来でした。特に叫び声をあげるシーンとか感情が発露するところとか、もう棒読みもいいところで。
あとは脚本もかなり引っかかる部分が多かったと思います。色々起こるんですけど、結局のところ自業自得な面が強すぎて、感情移入もしづらいです。そもそも主人公が海洋生物を巻き込まない船のスクリューを作るというメインストーリーがあるんですけど、それって別に海の生き物を守りたいからとかじゃなくて、うっかりミスで巻き込まれた両親が事故死したからなんですよね。あと後半の騒動はほぼチャオのやらかしのせいですし。
インタビュー形式で過去を振り返るような構成にしたのも謎。別にその構成じゃなくても物語は成立してますし、ぶっちゃけあんま面白くないし邪魔でした。多分、キャラクターを増やしてゲスト声優として有名人を出すためですかね?
もひとつおまけに言うと、キャラデザも完全に日本向けではないですよね。なんか、ある程度年を取った人たちが訳もなく二頭身で描かれていたりと、見た目のウケを狙う割にはサブキャラに魅力がなさすぎる。構想9年のくせに、公開時期をあえてアニメの王(鬼滅)にぶつけてるあたりも、ちょっとでもやれると思ったのか知らないがあまりに下手を打ちすぎている。
そんな何から何までダメな映画というのが世間一般の認識だと思います。でもね、ダメな子ほどかわいいっていうじゃないですか。僕の短い人生の中で、そのような感情を抱いたことってこれまでなかったんですけど、まさか映画に対して芽生えてしまうとは。そう、僕はこの映画めちゃくちゃ好きなんです。客観すれば上に連ねたように欠点をあげつらうことは容易なんですけど、ほら「何が嫌いかより何が好きかで自分を語れよ!」ってあの有名なルフィ(偽)も言ってたじゃないですか。じゃあ話しますね。
◉チャオとかいう性癖刺激モンスター
まずはやっぱりチャオですよね。彼女について簡単にまとめると純朴系ギザ歯亜人娘です。性癖の宝石箱です。

公式サイトより
チャオというキャラクターを生み出しただけでも、この映画の価値は鬼滅の刃よりも高いと私は信じています。おさかな形態もキュートでいいんですけど、やっぱ人間形態ですよね。画像右下のギザギザな歯を見せながら笑うとことか、もう僕の性癖にずっぽしなわけですよ。たまんねえなおい。
ただ可愛いだけのキャラクターならそれこそ星の数ほどいますが、それだけに収まらない、癖を凝縮した要素盛りだくさんなのも嬉しいです。手のひらの水かきとか、首元の鰓(えら)とか、万人受けを狙うなら外した方がよい部分でも欲望のままに詰め込んでる。人魚=グラマーじゃなく、貧乳気味なのも僕に刺さりました。フィギュアとか超ほしいです。絶対出ないでしょうけど。
見た目だけじゃなく、もちろん性格も100%パーフェクトなんですよ。ずっと一途に主人公のことを思い続けていて、やっと見つけたら思わず丸のみにしちゃうのとかも超かわいいですし、頑張って人間の料理を覚えてる途中に怪我して絆創膏貼っちゃうのとか、ベタなんですけどめっちゃいいです。彼女が一見訳の分からない行動を取っているのが、実は主人公との幼いころの約束だったと明かされるのとか、細かい粗は多い脚本ではありますがここだけはホントによくできてて感動しました。
いやホント、ちょっと多めに些細な部分に目を瞑ってもらえば、いいストーリーだと思うんですよマジ。上の伏線回収とか綺麗な形できっちりできてますし、ステファンとチャオが絆を深めていくところは自然とにやにやできる感じですし。ラストがきっちり超ハッピーエンドなのもいいですよね。ちょっと不安にさせておいてからのドーンですから、カタルシスも感じられます。アニメ映画なんだから、みんな小難しいこと考えすぎずに楽しみましょうよ。
◉超絶作画を惜しげもなく高速で押し流していく
もう一つ好きなポイントとして、アニメーションの出来がもう段違いに素晴らしかったと思います。癖のある作画ではあるんですけど、もう最初から最後までスピード感が半端ないんです。テンポよく場面が切り替わっていくので飽きることなく見れるんですけど、どのシーンもクオリティが非常に高くて冷静に考えればとんでもない労力がかかっていると分かる映画になっています。
特に力が入っているのはチャオのダンスシーンと後半のカーチェイス。ダンスシーンはそれ単体で見返したいくらいにチャオの魅力をこれでもかと描写していますし、水と光の表現とリズムがクッソ気持ちいい。唐突にMVでも始まったのかと疑うほど、突拍子もないぶっこみをしているシーンではあるんですが、まあこのクオリティなら自慢したくもなるかと納得しちゃいました。映画の配信よりも先にこのシーンをyoutubeにでもあげてほしいです。と思ってたらちょっと違うけどありました↓
なんと山田杏奈さんが歌ってます。実際の映画では謎太極拳とコラボしてました。気になったら見てね。
もう一つの激熱シーンであるカーチェイスも必見です。こっちはさすがに映像なさそうですけど、もうハチャメチャなアクションって感じ。近いところでいうと湯浅監督が作画してるクレヨンしんちゃんの劇場版ですかね。コミカル全開だけどアクションはフルスロットルな感じです。ちょっと崩れた絵が縦横無尽に画面を駆け巡る、みたいな描写好きな人にはたまらない映像だったと思います。
コミカルといえば、この映画いたるところにコメディ要素が敷き詰められていて、1分に1回くらいは何かしら笑わせようと仕掛けてきます。正直、結構滑ってるところはあるんですけど、シュールな感じの部分は僕も結構好きでした。終盤にどこかに吹き飛んでいたと思っていた記者のおっさんが如意棒に乗って現れながらあきらめずに取材しようとするところとかお気に入りです。
良い意味でも悪い意味でも尖りまくっている映画ではあるんですが、やっぱり僕は「癖が強い」映画が好きなんだなと自覚できる一作でした。興行でこけてることが話題になっていますが、馬鹿にするだけでなく、実際に劇場で見てほしいです。2割くらいの人には刺さると思います。
◉まとめ
・ぶっちゃけ欠点は多い
・だがチャオの可愛さでおつりがくる
・作画はホント凄い。見てて気持ちい
・ぬいぐるみ売り切れてた。絶対映画見てないのに買ってるやついるだろ

まとめると、人を選ぶがハマればとことんハマるラブコメアニメ、な映画でした。お願いですからどこかフィギュア作ってほしいです。人間形態の。