【感想】ファミリー☆ウォーズ
ファミリー☆ウォーズ
2018年公開
監督 阪元裕吾
◉あらすじ(公式サイトより)
誰の目にも幸せそうな、祖父、父親、母親、長女、次女、長男、次男の7人家族の福島家。
ある日、祖父の伸介が認知症を発症し、ドライブ中に子供を轢き殺し、その死体を福島家に持ち込んだ事から福島家の崩壊が始まる。周りの関係がない善意の人々を巻き込み、福島家の殺し合いが始まる!
◉私的評価
★★★★★★★☆☆☆ 7/10
◉総評
学生映画界を賑やかせた坂元監督の商業映画デビュー作。
個人的にはドンピシャでツボにはまりましたね。開幕でいらすとやの餅つきの画像が出た瞬間に、あ、これ絶対ハマるやつだわって思いましたもん。
邦画のいわゆるB級ホラーって、型にきっちりはまっちゃってるテンプレタイプか、型からデロデロにはみ出してる異物感マックスか、どっちかだと思うんですよ。『ファミリー☆ウォーズ』は断然後者で、振り切ってるんですね、色々と。
そうすると当然人を選ぶ作品、ってことになるんだけど、そもそもコレを見に来てる時点で映画に求める方向性は決まってるわけで。その欲望をきっちり満たしてくれる良い作品でした。
内容に触れていくと、後半のドタバタスプラッタももちろん好きなんだけど、前半のブラックユーモア溢れるコメディがすっげぇ面白かった。爺さんに餅を食わしても全然死ななくて、「砂糖醤油付けて」とか言っちゃうシーンは思わず吹き出しちゃったくらい。
というか、全体的に会話が面白いよね。割と俳優さんのアドリブらしいけど、作風にあった微妙にズレた台詞が笑いを誘う。ヤベェ性格のキャラしか出てこないんですよ、この作品。
映像的にはまぁ、低予算なのでそれほど良くないです。監督自ら、自主制作で撮った前作の方が映像が綺麗だ、なんて自虐するくらい。特に動きのあるシーンは普段シネコンでしか見ない人には耐えがたいでしょうね。それでも止まったカットは工夫を凝らしてるところが多くて、轢いた子供が車に張り付いてるシーンなんか、不謹慎なんだけどめちゃくちゃ面白い撮り方をしてた。
血みどろ描写もB級感丸出しなんだけど、耐性があれば非常に心地よい面白さがある。スプラッタお決まりの表現をこれでもか、というぐらい詰め込んでいて、ああ、そうだよこれが見たかったんだよ、なんて思ったり。
とまあ、万人にはオススメできないジャンルの映画になっております。こういうスプラッタ映画って清潔な国民性の日本ではあんまり市民権ないんだよね。園子温監督の『地獄でなぜ悪い』なんて、キャストが二階堂ふみに星野源、堤真一と全員が予測変換で出るくらい豪華なのに絶対地上波じゃ上映されないし。
それでも娯楽の一ジャンルとして確立している魅力があるわけでして、なんでか分からないけどたまに見たくなるんだよね、スプラッタもの。というわけで、坂元監督にも商業用映画できっちり稼いでもらって、その金で極上のスプラッタを撮影して欲しい。
話題になるほどの才能をヒシヒシと感じられる本作、グロが苦手な人も得意な人も是非劇場に足を運んでください。後悔は……するかもしれないなぁ、エロシーン見て途中で帰ってた客がいたし。
◉追記
あとこの映画で一番面白かったのは撮影に使われた家が借り物で、あまりにも散らかし過ぎて家主さんにマジギレされたっていう制作秘話。ついでにその怒られた翌日にラストのスプラッタシーンを撮影したっていう監督の懲りてなさ。ロックすぎる。