邦画大好き丸の感想文

黄金時代は去ったのか? いや、まだ邦画にも面白い作品は生まれるはずだ、多分

【感想】カメラを止めるな!

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カメラを止めるな!

2018年公開

監督 上田慎一郎

 

 

◉あらすじ(公式サイトより)

とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。​本物を求める監督は中々OKを出さずテイクは42テイクに達する。そんな中、撮影隊に 本物のゾンビが襲いかかる!​大喜びで撮影を続ける監督、次々とゾンビ化していく撮影隊の面々。
”37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”

 

 

◉私的評価

 

★★★★★★★★★☆  9/10

 

 

◉総評

 

いやぁ、面白い。今年見た邦画の中ではダントツだわ。さすが話題作。

 

何が上手いってストーリーの構成だよね。あれ、これ本当に面白いの?  って観客を不安にさせてから後半で一気に爆発させる。ジェットコースターみたいに。それでもって無駄な描写がほとんどないんだから退屈もしない。低予算映画特有の野暮ったさも感じさせないのは、監督や俳優の力量だろう。

 

DVDレンタルを待っている人は無理してでも劇場で見たほうが絶対にいいよ。アトラクションに乗っているかのような一体感は劇場でしか味わえないから。

 

さて、これ以上の感想は何を書いてもネタバレになるので書けない。それぐらい予備知識なしで見てほしい作品だ。近い作品でいうと『サマータイムマシン・ブルース』になるだろうか。『キツツキと雨』は逆に遠いかも?とにかく、仕掛けの面白さに特化した映画である。

 

何はともあれ、言えることはただ黙って見なさいということだけなので、次は著者の低脳な頭なりに、どうしてこの映画がここまでヒットしたのか、について考えたい。

 

予期せぬヒットということで、よく『バーフバリ』や『この世界の片隅に』等と比較される今作であるが、これらとは決定的に違う点が存在する。それは、10年前に公開されていたら、上記二作は変わらず評価されていただろうが、本作は一部の映画ファンにしか評価されないコアな作品となっていただろう、という点だ。だからこそ、映画をよく見る人ほど『カメラを止めるな!』がヒットしたことに驚いているはずだ。

 

一因としては、もちろんSNSに代表される口コミの進化もあるだろうけど、僕は映画を楽しむ一般大衆の目が“肥えて”きているのが大きな要因だったのではないか、なんて推察する。インターネットの普及によって以前よりも遥かに多くの映画と出会う機会が増えてきているのだ。駄作も名作も等しく。

 

一昔前なんてゾンビ映画といえばキワモノ中のキワモノ、それこそマニア向けと捉えられていた。だが、今の観客はロメロこそ知らなくとも、『バイオハザード』や『ゾンビランド』は知っている。あれだけ異色扱いだったPOVももはや1ジャンルとして市民権を得ているのだ。

 

だからこそ、『カメラを止めるな!』の特殊性にも怯むことなく、真正面から評価できる。大作も珍品も受け入れられる“目”が養われてきているのだ。

 

大げさに言ってしまえば、邦画は今作のヒットを機に、新しい時代の幕を開けようとしているのかもしれない。金を掛けなくても儲かる、観客は映画の面白さを理解してくれると証明されたからだ。日本映画黄金期、来ちゃうかも知んないね。