【感想】WE ARE LITTLE ZOMBIES
WE ARE LITTLE ZOMBIES
監督 長久 允
2019年公開
◉あらすじ(公式サイトより)
両親が死んだ。悲しいはずなのに泣けなかった、4 人の 13 歳。 彼らはとびきりのバンドを組むと決めた。こころを取り戻すために—
出会いは偶然だった。よく晴れたある日、火葬場で出会った4人。ヒカリ、イシ、タケムラ、イクコ。みんな、両親を亡くしたばかりだった。ヒカリの両親はバス事故で事故死、イシの親はガス爆発で焼死、タケムラの親は借金苦で自殺、イクコの親は変質者に殺された。 なのにこれっぽっちも泣けなかった。まるで感情がないゾンビみたいに。
「つーか私たちゾンビだし、何やったっていいんだよね」 夢も未来も歩く気力もなくなった小さなゾンビたちは ゴミ捨て場の片隅に集まって、バンドを結成する。
その名も、“LITTLE ZOMBIES”。 やがて社会現象になったバンドは、予想もしない運命に翻弄されていく。
嵐のような日々を超えて、旅のエンディングで4人が見つけたものとは―
◉私的評価
★★★★★★★★☆☆ 8/10
◉総評
まずは予告編のテーマソングを聞いてほしい。
控えめに言って最高でしょ?
個人的には『何もない〜(ウィーアーウィーアーリトルゾンビーズ)』ってところが最高にエモくて好き。
妙な中毒性があるんですよ、この曲。そして映画そのものもそんな感じなんです。
ダウナー系なローテンションの子供たちなのに、アンバランスに挿入されるレトロ&ポップな演出。話の内容はすっげえ重くて、人はポンポン死んでいくのに、映画全体の雰囲気はどこまでもふわふわしてる。だから、一杯目のビールみたいにゴクゴクいけちゃうんですよ。
話の入りもいいですよね。どうやらバンドを組むみたいなんだけど、途中まで全くそのゴールにたどり着くイメージが湧かない。だから先が気になっちゃってのめりこんじゃった。
ストーリーであと感心したのは、多分この映画って社会風刺が割とメインなんですよ。いじめに対してだったり、昨今のネット文化に対してだったり。あるいは、日本特有の『不謹慎』文化。そんなもろもろ現代社会に対してのメッセージはあるんですけど、しつこくない。基本的には子供たちの悪ノリでポンポン話が転がっていくので、説教じみた感じにはなってないんですよね。でも、きっちりと言いたいことは伝わるんです。そのバランス感覚が素晴らしいなぁと。
あとは子供たちの演技ですね。もちろん子役特有の棒読みっぽい感じは出てるんですけど、感情が薄いというキャラ付けをしていることで、普段の映画だと欠点になる部分が逆に上手いことはまってるんです。そこまで計算してたのかは分かりませんが、他の邦画にはない味付けだなぁ、と。
脇を固める大人たちも、贅沢な使われ方をしています。あくまで子どもメイン、とは言っても、佐々木蔵之介を開幕すぐに殺してしまうのは中々あるもんじゃない。
とまぁ、映像にしても脚本にしても、新しさを感じさせてくれる良い作品でした。全く見る気なかったのにたまたま入った映画館でこういう作品に出会えた時って、めちゃんこ嬉しいですよね。これだから映画館巡りはやめられない。