邦画大好き丸の感想文

黄金時代は去ったのか? いや、まだ邦画にも面白い作品は生まれるはずだ、多分

【感想】マイスモールランド

マイスモールランド

2022年公開

監督  川和田恵真


www.youtube.com

 

◉あらすじ(公式HPより)

埼玉に住む17歳のクルド人サーリャ。
すこし前までは同世代の日本人と変わらない、ごく普通の高校生活を送っていた。
あるきっかけで在留資格を失い、当たり前の生活が奪われてしまう。
彼女が、日本に居たいと望むことは“罪”なのだろうか――?

 

◉私的評価

★★★★★★★☆☆☆   7/10

 

◉総評

バランス感覚が凄くいい映画。

 

メインテーマは『移民問題』なんだけど、映画を見ている大抵の人は移民じゃないので、感情移入って普通はできない。でも、主人公のサーリャはごく一般の女子高生としてのアイデンティティしか持っておらず、内面は完全に日本人なのだ。だから、それが突然あなたはこの国に住む資格はありません、なんて烙印を押される衝撃がまるでわが身のことのように感じられる。このポジショニングというか、構成は非常に有効で、徐々に悪くなるサーリャの周りの状況にストレートな感情移入をすることができる。

 

主人公を演じる嵐莉菜さんの素朴で自然な演技も、その没入感を後押しする一因となっていた。なにより、めっちゃかわいい。可愛い女の子が可哀そうな目に合う映画は、ぐっとくるものがある。

 

バランスといえば、移民問題についてニュートラルであろうとするストーリー展開も非常に好感が持てる。政府の移民政策は締め付けがきつすぎる、と単純に否定するのは簡単だ。だが、コインランドリーをルール無視して使ったり、日本語を覚える気が全くなかったりと、在日クルド人の悪い部分もしっかり描いている。なにより、主人公もクルド人全体に対してネガティブな感情を終始持っていたりする。だから、彼女を通して僕たち観客もそれに引っ張られたりするのだ。

おそらく、この映画を見た後で「クルド人サイコー」となる人は誰もいないだろうし、かといって「移民は出ていけ!」となる人もいない。もやもやしたものを残し、観終わった後も考えさせられる、そういう作品だ。

 

ただ、中立を取りすぎようとしたせいか、ラストは非常にふんわりしているので、そこはもう少し主張を寄せてもよかったような気がしないでもない。余韻を残すラスト、といえば聞こえはいいが、ずっとストレスフルな展開が続いたので、最後くらいスカッと終わらせてもよかったのではなかろうか。

 

あとは、恋愛要素は果たして必要だっただろうか、と個人的には思う。別にあれが女友達でも物語は成立しただろうし、彼が何か波紋を起こすわけでもなく、その存在に必然性が見いだせなかった。まあ、エンターテイメントとしては致し方ない部分もあったのかもしれない。

 

他の見どころと言えば、やっぱり藤井隆さんの怪演だろう。小市民なコンビニ店長役を非常に面白く演じていた。ちょい役なのに存在感がすごい。

 

総括すると、物足りなさは感じるものの小ぎれいにまとまった社会派映画といったところだろうか。まあ、そんな小難しいものに興味なくとも、サーリャちゃんが超絶可愛いのでそれを目当てに見てもいいかもしれない。