【感想】ヴィレッジ
ヴィレッジ
2023年公開
監督 藤井道人
◉あらすじ(公式HPより)
夜霧が幻想的な、とある日本の集落・霞門村。神秘的な「薪能」の儀式が行われている近くの山には、巨大なゴミの最終処分場がそびえ立つ。幼い頃より霞門村に住む片山優は、美しい村にとって異彩を放つこの施設で働いているが、母親が抱えた借金の支払いに追われ希望のない日々を送っている。かつて父親がこの村で起こした事件の汚名を背負い、その罪を肩代わりするようにして生きてきた優には、人生の選択肢などなかった。そんなある日、幼馴染の美咲が東京から戻ったことをきっかけに物語は大きく動き出す――。
◉私的評価
★★★★★☆☆☆☆☆ 5/10
◉総評
全編通して漂う不穏な雰囲気はとても好みでした。横浜くんのやさぐれ男とできる男の演じ分けもすごく上手く、あんまり演技がよい印象がなかったので素直に見直した。あと、一ノ瀬ワタルはパワー系ヤバい奴を演じさせたら邦画界に比類ないくらいの立ち位置になったなあと。まーじ怖い。彼主演の『サンクチュアリ』(ネットフリックスオリジナルドラマ)はばちくそ面白いから是非見てね。
とまあ、雰囲気作りと役者はよかったんだけど、ストーリーのほうは物足りなさを感じた。おそらく一番の主題であろう村社会の閉塞感なんだけど、これが弱い。人物描写に重きを置きすぎていて、村とか地域に関する描写が少ないんです。そのメインテーマに対する主張が弱いので、全体としてピリッとしてないというか。あんま村関係なくね、って印象でした。
あと、力を入れていると思われる人物描写に対しても、若干違和感があるというか。本当にどうしようもなく落ちぶれている主人公が、出戻りのヒロインに発破を掛けられただけであそこまでずんずん出世していくのが、まるでなろう系を見ているかのような感じでした。それがすなわち『邯鄲の夢』ってことなんだろうけど、あまりにも簡単に行き過ぎて現実味がない。カンタンだけに。
そうそう、『邯鄲の夢』=伝統芸能である『能』に絡めてストーリーが進んでいくんですが、そこまで能をプッシュする意味があったのかなという疑問もあります。能のシーンは明暗くっきりとした迫力ある映像になっていて見ごたえはあります。ただ、そこまで綿密に能を描くんであれば、さっきも言ったようにもっと村社会の陰惨なところとかを描いてほしかった。ヒロインも不自然なくらいに能が好きすぎだし、何なら中村獅童を出すためにそこまでプッシュしたのかななんて邪推しちゃう。
まあ、一番文句があるのは自閉症を持っている(多分)ヒロインの弟の使い方なんですけどね。見たらわかると思うんですけど、結構序盤から登場するんですが、結局はあのオチの為に用意されただけのような存在で。主人公やら村やらがめちゃくちゃになったきっかけを作っておきながら、ラストシーンでさらっと村から出ていく。障害を理由に守られているような感じがして、すごくモヤっとしました。邦画では障碍者を絶対に悪く描けないからね。
まー、あと予告詐欺(ホラー映画的な意味で)とか色々言いたいことはあるんだけど、金がかかってると分かる映像の綺麗さは見ものなので、総評としては、鑑賞して損はしないだろう、という一作でした。