邦画大好き丸の感想文

黄金時代は去ったのか? いや、まだ邦画にも面白い作品は生まれるはずだ、多分

【感想】リバー、流れないでよ

リバー、流れないでよ - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

リバー、流れないでよ

2023年公開

監督 山口純


www.youtube.com

 

◉あらすじ(公式HPより)

 

舞台は、京都・貴船の老舗料理旅館「ふじや」。
静かな冬の貴船。ふじやで働く仲居のミコトは、別館裏の貴船川のほとりに佇んでいたところを女将に呼ばれ仕事へと戻る。
だが2分後、なぜか再び先ほどと同じく貴船川を前にしている。
「・・・・?」

ミコトだけではない、番頭や仲居、料理人、宿泊客たちはみな異変を感じ始めた。
ずっと熱くならない熱燗。なくならない〆の雑炊。永遠に出られない風呂場。自分たちが「ループ」しているのだ。しかもちょうど2分間!

2分経つと時間が巻き戻り、全員元にいた場所に戻ってしまう。
そして、それぞれの“記憶”だけは引き継がれ、連続している。
そのループから抜け出したい人、とどまりたい人、それぞれの感情は乱れ始め、
それに合わせるように雪が降ったりやんだり、貴船世界線が少しずつバグを起こす。
力を合わせ原因究明に臨む皆を見つつ、ミコトは一人複雑な思いを抱えていた。

 

◉私的評価

★★★★★★★☆☆☆   7/10

◉総評

 

前作の感想はこちら。

hougatarou.hatenablog.com

 

前作『ドロステのはてで僕ら』が絶妙にハマらず、なんだか偉そうな講釈を垂れ流している感想ですね。

 

というわけで、今作もあまり期待せずに見に行ったんですが、すごく面白くて驚きました(失礼)。タイムリープとループの違いはあれど、同じ「2分間の時間跳躍」というテーマ。それなのに、ここまで前作とは違う仕上がりになっているとは素直に驚きました。

 

前作の感想で偉そうに言ってた言葉をあえて使うとするならば、映画というスケールにしっかり合わせてきたな、という感じです。前作にはあまりなかったキャラクターの内面描写をきちんとすることで物語に厚みが出ていたし、ループするたびにころころ変わる貴船の風景も映画ならではといった感じですごく印象に残った。

 

あとは2分間の長回しを繰り返すという手法は凄く独特でよかったと思います。聞くだけだと単調そうですが、話のテンポがめちゃくちゃ速いので飽きさせない。同じような物語を普通に作ろうと思ったら、多分何ループかさせてから、あれ、もしかしてループしてる? みたいな感じの流れにするんだろうけど、今作では最序盤のうちに登場人物全員がループを理解するというフルスロットルさ。

クッソ早いテンポのまま、ループするごとに何かしらの進展が起きるので、同じことの繰り返しでも全然飽きない。何十回も同じ階段を上るヒロインの姿を見せられているのに、次に何が起こるかワクワクしながら見れるというのは中々できる体験ではないと思う。

 

そんな感じに、映像作品でしかできない表現をしつつも、前作でも評価部分であった2分間という短い時間を上手く活用する脚本の巧さと、台詞センスの高さはしっかりと引き継がれており、純粋に前作プラスアルファの出来となっているのがすごい。

特に台詞は「初期位置」とか「このループは捨てる」とか、よくこんなの出てくるなと感心するものばかりで、そこも2分間の繰り返しという単純な流れを面白くしている一因だと思いました。

 

と、ここまでべた褒めですが、一つだけ、気になる部分というか明らかにあれ?となるところがありまして。中盤辺りで主人公が意中の男と逃亡するみたいな展開があるんですけど、ここだけは尺稼ぎじゃねえのってくらい中途半端に長くてつまらなかったです。主人公の行動が全く共感できないし、それに付き合う男も男だし、しばらく同じような画が続くし。あー、2分間の繰り返しだとさすがにネタ切れしちゃうのかと思う反面、あれを続けるくらいだったら脇役たちのサイドストーリーにもうちょっと触れてもよかったんじゃないかなって思いました。

 

まあ、ケチをつけるのはそこぐらいで、オチもいつものお約束な感じですごく好きだったので、最後まで楽しんでみることができました。次作も期待大ですが、裏切られると怖いので(ドロステはまさにそれ)そこそこという感じで待っておきたいと思います。

 

あと、この映画で一番エモいのは、舞台となった「貴船ふじや」が主演の藤谷理子さんのモノホンの実家だということ。ドキュメンタリーとかじゃなく、実家を舞台に映画を撮るなんてマジで世界で一人の経験なんじゃないだろうか。