邦画大好き丸の感想文

黄金時代は去ったのか? いや、まだ邦画にも面白い作品は生まれるはずだ、多分

【感想】食べられる男

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食べられる男

2016年公開(リバイバル

監督  近藤啓介

 

◉あらすじ(公式サイトより)

地球平和のために作られた条約「地球人被食制度」により、1週間後に宇宙人に食べられることを告げられた工場員の村田よしお。彼の疑問はただ一つ「僕なんて、美味しいのかな?」。その日から、宇宙人に美味しく食べられるためにクリームを塗り、ヘッドギアをつけ、下ごしらえを始める村田。時を同じくして突然できた友達・木下、生き別れた娘に会いに行くとお金の話ばかりする元嫁、そして人懐っこい女の子ゆきちゃん——それまで友達、両親、家族のいない孤独な日々を過ごしていた村田は、様々な出会いを経て、宇宙人に食べられるまでの悲しき1週間をどう過ごすのか?

 

◉私的評価

 

★★★★★☆☆☆☆☆  5/10

 

 

◉総評

 

シネアスト・オーガニゼーション大阪という自主制作映画への助成企画によって作成された本作。ですが、商業用映画として観れるものになっていたのがまず良かったポイント。

 

作品全体を通して漂う哀愁も空気が壊れることなく一貫していたし、身近なSF作品らしい「少し不思議」な雰囲気も出ていたように思う。

 

「被食制度」っていうアイディアが凄いよね。常人には到底思いつかない発想。藤子不二雄の「ミノタウロスの皿」が元ネタなのかなぁ?  とりあえず宇宙人に食べられる、というアイディアを思いついて、後からストーリーを書いたとか。それがあんな鬱々しい脚本になるのだから驚きだ。

 

だってさ、普通自分が食べられるってなったら何とか抵抗しようとするじゃん?  普通ならそっちのストーリーラインで進めそうなものを、主人公は終始食べられることを受け入れているんだよね。そっちできたか、っていう意外性の意味では抜群だった。

 

キャストに関しては主演の本多力さんが怪演。まさに彼を見るための映画と言っても過言ではないくらい。最初の全く喋らない寡黙なキャラからどんどん心を開いていく様は、リアリティがあって演技力の高さを感じました。

 

最近は地上波でも良く見るようになってきましたね。こういう個性派が活躍してくれると、映画にももっと幅ができて嬉しいです。

 

ただね、良い映画だったんだけど、少しばかり合わない部分もあって。ちょっと奇をてらいすぎた演出が目立ちました。

 

最後のシーンはまぁ、良しとしよう。ネタバレになるので言わないが、今までの余韻をぶっ壊すラストなんですけど、まだ許容できるレベル。というか、むしろ好きな部類。

 

だけど弁当食うシーンの長回しだったり、意味ありそうであんまりない主人公が持ってた石だったり、こうなんていうか、いかにも独特なセンスあるでしょ?みたいなシーンが多くて。

 

新進気鋭なので新しいことに挑戦するのは良いことだと思うけど、映画としてメッセージ性とエンターテイメント性はきっちり両立させないといけないと僭越ながら僕は思っているわけで。例え伝えたいことをカメラに撮ってもそれが面白くなければ映画としては失敗なんですよね。

 

でもまぁ、尖っていて見所は沢山あったので、好きか嫌いかで聞かれると好きな部類に入る、そんな映画でした。